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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1838/2051

第1838話 亀裂を巡る戦い、決着1(1)

「・・・・・・力の意味か。それは詭弁と紙一重だろう・・・・・・!」

 第1の亀裂、ロシア。レイゼロールVSレゼルニウスの戦い。レイゼロールは自身の体から噴き出す『終焉』の闇を固め、槍の形にした。そして、それをレゼルニウスに向かって投擲した。

「なるほど。そういう考え方を出来るようになったんだね。また君の成長が窺えて嬉しいよ」

 レゼルニウスはしかし回避しなかった。レゼルニウスが召喚した槍が、自動的に闇の槍を弾いたからだ。

「確かに君の言う事も尤もだ。だけど・・・・・・力の意味を考えるか、詭弁と切り捨てるかでは差があると思うよ。少なくとも、僕は前者の方が好きだな」

「ふん、正義なき力は暴力だとでも言いたいのか」

「いいや。そこまで言うつもりはないよ。僕が言っているのはあくまで好みだからね」

 レゼルニウスがフッと笑う。その笑みを見たレイゼロールは、レゼルニウスのその笑みが余裕そのものに見え、思わず苛立ちを感じた。

「なら、兄さんは分かっているというのか。自分が持つ力の意味を」

「あくまで僕なりの理解だけどね。『終焉』も、そして僕が今使っている冥界の神としての力も、僕なりの答えは出したよ」

 レゼルニウスは無造作に手を振り、地面から真っ黒い骸骨――亡者と呼ばれるモノたち――と、空中に翼を持った機械人形――天使と呼ばれるモノたち――を召喚した。亡者と天使たちはレイゼロールへと襲い掛かる。

「・・・・・・そうか。流石は兄さんだな。だが、我に会うという欲望のために、忌神クズについた事実が、その言葉を不格好にさせる」

 レイゼロールは『終焉』の闇を固め、2振りの剣に変えた。そして、その剣で亡者と天使を切り裂く。初めにレゼルニウスが亡者と天使を召喚した時の流れと同じだ。

「耳が痛い。君の言う通りだよ」

 レゼルニウスが苦笑する。レイゼロールは左手の剣をブーメランのようにレゼルニウスに向かって投げた。だが、結果は先ほどの槍の時と同じ。レゼルニウスの頭上の槍が1人でに動き剣を弾く。

「ちっ、厄介なものを・・・・・・」

「敵にとっての厄介は、こちらにとっての褒め言葉だからね。さて、君はこれをどう攻略する? と言っても、攻略を考える時間は与えないけどね」

 レゼルニウスはスッとアイスブルーの瞳を細めた。そして、力ある言葉を紡ぐ。

「第1の冥獄、這う炎」

 レゼルニウスがそう唱えると、レゼルニウスの立っている地面の周囲に炎が奔った。その炎の色はレゼルニウスが身に纏う闇と同じ、紫闇の色だった。その炎はまるで意思を持っているかの如く氷原を奔り、レイゼロールの方に向かって来た。

「ふん、そんな愚鈍な速度の炎に当たるものか」

 レイゼロールは強く地を蹴り炎を避けた。炎が氷原を奔る速度はそれなりだが、レイゼロールからすれば遅々としたものだった。

(さて、実際あの槍をどう攻略する。兄さんをどう倒す。我の攻撃手段は『終焉』に限られる。その『終焉』も何とか剣や槍といった、単純な武器に変えられるくらいの熟練度しか我は持ち合わせていない)

 対してレゼルニウスの攻撃の手段は多様だ。しかも、恐らくまだまだ手札はあるはずだ。

(我の目的は預かった符を亀裂に貼る事。そのためには、兄さんに勝たなければならない。意表を突いて符を貼る事は、今の状況では不可能だ)

 レイゼロールがチラリと視線をレゼルニウスの背後にある大きな亀裂に向ける。あの亀裂の周囲――正確には半径5メートルほど――は、時空間が強く歪んでいて座標の設定が出来ない。そのため、亀裂のすぐ近くに転移して符を貼るという方法は取れない。

(今ある手札、『終焉』で兄さんに勝つしかない。しかし、我の『終焉』では・・・・・・)

 レイゼロールは苦悩した。諦めるわけではないが、レゼルニウスに勝てるビジョンが見えなかった。

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