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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1829/2051

第1829話 亀裂を巡る戦い5(2)

「どけ『貴人』!」

 しかし、葬武が左手でメリーを押しのけた。葬武は写し身の斬撃を棍で受け流すと、左手で写し身の鳩尾みぞおち部分に掌底を放った。

「・・・・・・」

「ちっ、威力が足りないか」

 だが、当然というべきか写し身は無傷だった。葬武は棍を回し写し身に打撃を放つ。葬武の棍による攻撃は容易に岩を砕くが、それでも写し身に損傷を与える事は出来なかった。

「・・・・・・面白い。貴様を砕く事が出来れば、俺は更に強くなれるな」

 しかし、葬武は笑みを浮かべた。飽くなき強さへの探求。葬武にとって自分の攻撃が通じない相手は絶望する対象ではなく、喜びの対象だった。

「・・・・・・!」

 写し身は右手の実体剣を葬武に向かって振るった。それは守護者の反応速度を超越した剣速だった。

「舐めるな。その速さはスプリガンとの戦いで既に学んでいる」

 普通ならば避けれないはずのその一撃をしかし葬武は躱した。中国でスプリガンの速さを体験してから、葬武は敵の初動を見極める目と敵の動きを察知する感覚を鍛えた。その結果、葬武はある程度自身が反応出来ない攻撃を避けれるようになっていた。

「うわキモっ。何でそれ避けられてるのあんた」

 合流するように追いついてきたイヴァンが、右手のナイフを写し身に向かって振るう。だが、やはりナイフによる斬撃は写し身に傷を与える事は出来ない。

「・・・・・・!」

 写し身は左腕の砲身を光刃に変えると、それをイヴァンに向かって放った。その攻撃も普通ならば避ける事はほぼ不可能なのだが、イヴァンは写し身が光刃を振るう瞬間には、既に斬撃の軌道上から身を外していた。

「よく言う。お前こそ避けられているではないか」

「俺のは半分勘だよ。それに、あんたが避けるのを見てたし。あんたみたいに初見で見極めたわけじゃない。一緒にしないでくれ」

「俺のこれは鍛錬の成果だ。天賦の才能を持つ貴様とは違う。そういう意味で、俺とお前は一緒ではない」

「あっそう」

 至近距離で反応出来るはずのない攻撃を回避しながら、葬武とイヴァンは言葉を交わす。加えて、2人は棍とナイフによる反撃を時々行っていた。守護者としての身体能力があるとはいえ、写し身の攻撃を避け反撃までする。それは人の限界を超えた戦闘能力と呼んでも差し支えなかった。

「ひゅー、やるねえ。普通に人外レベルに片足突っ込んでやがる。あいつら将来いい傭兵になれるぜ」

 葬武とイヴァンを見ていたゾルダートがニヤリと笑う。ゾクゾクと体の底から湧き上がる闘争への興奮。それが我慢できなくなったゾルダートは腰部からナイフを引き抜き、反対の手で背中に装備していたサブマシンガンを取り出した。

「さあて、じゃあ俺も混ざるとするかァッ!」

 ゾルダートはレイゼロールから模倣した身体能力強化の力と『加速』の力を全身に施すと、神速の速度で写し身へと接近した。

「おらどけお前ら! 次は俺の番だ!」

「っ・・・・・・」

「ちょ、おい!」

 突如として乱入してきたゾルダートに葬武とイヴァンは咄嗟に体を引く。ゾルダートは右手のナイフにゼノから模倣した『破壊』の力を纏わせると、それで写し身の左の腿にナイフを振るった。だが、概念無力化の力を有する写し身の体に『破壊』の力は効かない。結果、ナイフの刃は写し身の体には通らなかった。

「ふーん、効かねえか。なるほど・・・・・・ねぇ!」

 写し身の本体であるイズの情報は亀裂に派遣されている全員が共有している。この機械人形の体には、本体と同じように概念を無力化する力が搭載されている。瞬時にそれを理解したゾルダートは左の前蹴りで写し身の胴体部を蹴り距離を取ると、左手のサブマシンガンの引き金を引き、銃弾の嵐を浴びせた。

「・・・・・・」

 だが、ただの銃弾が写し身の体に損傷を与えられるはずはない。当然の事ながら、写し身は無傷だった。写し身は背後の魔法陣から機械の剣を大量に呼び出すと、それらを近くにいたゾルダート、葬武、イヴァン、メリーに対して攻撃させた。

「ははっ、剣の嵐かよ。中々にスリル満点だな!」

「言ってる場合ですの!? 全く私が淑女じゃなかったら余裕で今頃串刺しですわ!」

「いや、絶対淑女関係ないでしょ!?」

「・・・・・・」

 メリーの叫びに対し、場違いではあるが、イヴァンはそう突っ込まずにはいられなかった。ゾルダート、メリー、イヴァンはそんな言葉を発しながら剣を避けていたが、葬武はただ無言で剣を回避していた。

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