第1828話 亀裂を巡る戦い5(1)
「さあ、舞踏会の始まりですわ!」
第5の亀裂、アメリカ。サーベルとフリントロック式の銃という、古風な銃と剣という装備で、メリーは写し身に向かって駆け出した。その際、左手の銃を撃ちながら、メリーは前進した。
「けっ、何が舞踏会だよ。一々意識が高えし、言い回しもムカつく。これだから嫌いなんだよ金持ちは」
菲はそう呟きながらも、自身の能力である5体の人形を呼び出した。盾を持った白い人形と弓を持った白い人形。青龍刀を持った黒い人形と偃月刀を持った黒い人形。そして、大型の青龍刀と盾、背中に2つの剣を装備した、黒と白が混じった人形。それらは菲の命令に忠実に動く人形たちだ。
「行くぞ『凍士』」
「分かってるよ。ああ、本当面倒くさい・・・・・・」
葬武とイヴァンも虚空から各々の武器を召喚し、写し身へと突撃を仕掛ける。
「・・・・・・!」
それに対し写し身は両腕の砲身を向かって来る者たち――メリー、葬武、イヴァン――に向けた。次の瞬間、放たれたのは如何なる者をも塵に還す、概念無効化の力を宿した破滅の光。写し身はそれを乱れ撃った。
「っ、レーザーの乱射なんて卑怯ですわよ!」
「ふん」
「これ普通に死ぬって!」
メリー、葬武、イヴァンは何とかその乱射を避ける。しかし、その被害は3人に対してだけではなく、後方にいた者たちにも降り注いだ。
「ふざけやがって! 白兵1、頭兵、私を守れ!」
「ひぃぃぃー!? 一撃必殺級の攻撃を乱射するんじゃないわよ! 痛いのは嫌なのよ!」
「ははっ! こいつは無茶苦茶だな!」
菲、キベリア、ゾルダートも何とか攻撃を凌ごうとする。菲は盾を持った白い人形と、同じく盾を持った黒と白が混じった人形に自分を守らせたが、写し身の放ったレーザーに耐え切る事は到底出来ず、一瞬で人形たちは蒸発させられた。菲は残りの人形を盾代わりにしながら必死にレーザーを避けた。キベリアは箒で宙を3次元的に動き回り、ゾルダートは地上で紙一重でレーザーを避けた。
そして、ここは大都会のど真ん中。光導姫の人払いの結界が展開され一般人の姿はないとはいえ、町はそのまま。写し身の放ったレーザーは、車や家、聳え立つビルなどを次々と穿ち破壊していった。
「こんのッ・・・・・・! おやめなさい!」
レーザーの弾幕を気合いと根性で掻い潜ったメリーは、至近距離から銃を乱射し、サーベルによる一撃を放った。メリーの光導姫として能力は、自身の武器によってダメージを与えた相手を、ダメージの度合いによって弱体化させるというもの。ゆえに、まずは相手を傷付ける事から始めなければならない。
だが、
「・・・・・・」
写し身は弾丸もサーベルも避ける事はしなかった。メリーの攻撃は全て写し身の体に弾かれた。
「なっ・・・・・・!?」
写し身の体が、見た目からは想像も出来ない硬さを有していた事にメリーが驚く。写し身は右手の砲身を実体剣に変化させると、メリーに対しそれを振った。その剣速はメリーの反応を超えていた。




