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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1826/2051

第1826話 亀裂を巡る戦い4(4)

 すると、響斬の中から何かが消費される感覚があった。消費されたのは恐らく闇の力。次の瞬間、響斬はボロボロの右手を神速の速度で動かし、写し身の体を逆左袈裟から切り上げた。写し身の本体は剣や端末装置より遥かに硬かったが、響斬の一撃は写し身の体に深く傷をつけた。

「・・・・・・?」

「は、ははっ・・・・・・なん、か・・・・大概チートだな・・・・僕の性質も・・・・・・」

 響斬に反撃された写し身は不思議そうに首を傾げた。響斬は今にも倒れそうな体で弱々しくだが、笑ってみせた。

「おらッ! あんたやっぱり凄えな響斬さんよ!」

「限界超えたみてえだな! 俺も負けてられねえぜ!」

 自由に動けるようになった刀時と冥が写し身に襲い掛かる。写し身は機械の翼で上空に羽ばたき、その攻撃を回避した。

「・・・・・・」

 写し身が地上にいる者たちを睥睨する。響斬が斬った傷は超再生の力で既に修復されていた。

「うわー・・・・・・僕が、必死でつけた傷・・・・・・もう治ってらあ・・・・・・どうしよ・・・・・・」

 響斬はボロボロの体で宙に浮かぶ写し身を見上げた。しばらく回復に専念しなければ、もうほとんど動けない。対して、敵は回復持ち。しかも、恐らく自動修復の類だ。正直、勝つビジョンが見えない。

「・・・・・・あいつが浮いてる今なら、符を亀裂に貼れるんじゃねえか? 別にあいつに勝つ事が俺たちの勝利条件じゃないし」

「・・・・・・いや、やはり奴は倒さねばならないだろう。奴はさながら亀裂を守る守護者だ。最優先事項は亀裂の守護だろう。あれ程の速度と性能だ。排除しなければ、ソレイユ様から預かった符は貼れん。これは1枚しかないのだ。しくじる事は出来ない」

「まあ、そうだよな・・・・・・」

 アイティレからそう言われた刀時は小さく息を吐いた。やはり楽は出来ないようだ。

「情けねえ事言ってんじゃねえよ守護者。男なら絶対に敵を倒すっていう気概を持て」

「今の時代男云々は古いぜ。だがまあ・・・・・・そうだよな」

 冥の言葉にそう返事をしながらも、刀時はニヤリと笑った。すると、そのタイミングで写し身が両腕の剣を砲身に変え、破滅の光を地面に向かって放った。写し身は次々に破滅の光を乱れ撃つ。それはまさしく光の雨だっな。

「っ、避けろッ!」

 アイティレがそう叫び、その場にいた者たちは回避行動を行う。離れた場所にいたショットも慌ててその場から離れる。

「ちっ、シケた戦法しやがって。おい響斬! 最後の力でも何でも振り絞って、あいつの翼切れ!」

「む、無茶言うなよ冥くん・・・・・・な、なんとか『加速』の力があるから避けられてるけど・・・・・・まだもう少し回復しないと、剣は振れないよ・・・・・・」

 黒い血に染まった響斬が首を横に振る。先ほど振るった一撃で、響斬の右腕は千切れる寸前だ。次に剣を振れば途中で腕が飛ぶだろう。そうなれば、更に回復に時間がかかる。

「情けねえな。気合いで何とかしろよ、って言いてえところだが仕方ねえ。なら、自力で落とすか!」

 冥はニヤリと笑うと、地面を大きく蹴った。闇人の身体能力による跳躍能力は凄まじく、冥は10メートルほど飛び上がった。

「・・・・・・!」

 しかし、それでも写し身のいる場所にまでは届かない。更に空中では飛行能力を持たない冥は身動きが取れない。写し身はそんな冥に向かって破滅の光を放った。

(はっ、さすがにこれを喰らったら俺もヤバい。多分塵になって再生には1日くらいは掛かるな)

 危機だというのに冥は笑った。危機、それは言い換えれば逆境だ。そして、その状況でしか発動しない力が冥にはある。冥の体に闇が纏われる。それは冥が言う逆境状態になったという事だ。

「空中で動けねえなら()()()()()! やってやるぜ! 限界なんざ超えてなんぼだ!」

 冥は両足に闇を集中させた。そして、空中で空を蹴った。結果、冥は真横に移動し光を避けた。

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