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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1823/2051

第1823話 亀裂を巡る戦い4(1)

「ははっ、さあ行くぜ!」

 第4の亀裂、アルゼンチン。魔機神の写し身が放った機械の剣を掻い潜りながら、冥が笑みを浮かべた。その笑みは戦いに取り憑かれた者の笑み。戦闘狂の笑みであった。

「・・・・・・!」

 剣を抜けて来た冥に対し、写し身は魔法陣から端末装置を呼び出した。端末装置はレーザーを放ち冥を穿とうとした。

「バカが! 甘いんだよ!」

 だが、冥は余裕を以てレーザーを回避した。『加速』や闇による眼の強化を使えない冥が、レーザーの速度に反応するのは普通に考えれば不可能だ。しかし、冥は避けてみせた。戦闘の達人としての観察眼で、レーザーが放たれる場所を一瞬にして予測してしてみせたのだ。

「おらよッ!」

 冥は右の拳を写し身の顔面に向かって放った。写し身はその一撃を回避しなかった。結果、冥の拳が写し身の顔を穿つ。

 しかし、ダメージを負ったのは冥の方だった。写し身の体は、凄まじく硬い金属のような物質で出来ている。ガンッと何かが鉄板に激しくぶつかったような音が響くと同時に、バキッという音が冥の拳から鳴った。

「ああ?」

「・・・・・・!」

 恐らくは冥の拳の骨が折れた音であろう。冥は不可解な顔を浮かべた。そんな冥に対し、写し身は左腕の砲身を向け、そこから破滅の光を発射した。

「ちっ」

 冥は咄嗟に射線から飛び退いた。放たれた光は空へと届き雲を散らす。当たれば上半身が丸ごと消し飛んでいただろう。

「うわ、あれには当たりたくないなぁ・・・・・・」

 その光景を見た響斬が引いたような顔を浮かべた。いくら闇人が不死だといっても、塵から再生するのにはかなりの時間を有するだろう。まあ、それ以前に消し炭になる感覚なんて味わいたくはないが。

「一応『硬化』した拳で殴ったんだがな。情けねえ。骨が折れやがった」

 一気に腫れ始めた右手を見ながら冥はそう呟いた。今の冥の拳は鋼くらいならば砕けるはずだが、それでも冥の拳が打ち負けたという事は、写し身の体の強度はそれ以上という事だ。

「大丈夫? 右手が凄く腫れてるけど」

「たかが骨が折れただけだ。問題ねえ。それより、気をつけろよ。あいつは尋常じゃなく硬い。気合い入れて殴らねえとこうなるぜ」

 声を掛けてきたエルミナに冥は軽く忠告する。エルミナも冥と同じ肉体のみを武器として戦うタイプだ。冥の言葉を聞いたエルミナはコクリと頷いた。

「ん、分かった。気合い充分で殴るよ」

「・・・・・・そういう問題ではないと思うのだがな」

 隣でエルミナの答えを聞いていたアイティレがどこか呆れた様子になる。だが、アイティレはすぐにその顔を真剣なものに戻した。

「機械の剣とレーザーを放つ装置の召喚、そして、武装している兵器・・・・・・今のところ、奴の攻撃は情報を共有しているイズの戦闘スタイルと同じものに感じるな」

「だな。俺たちはイズって奴を見た事はないけど、聞いてる見た目とも酷似してる。姿形だけじゃなく、攻撃手段まで似てるってなると・・・・・・やっぱり、イズの複製体って感じだよな」

 アイティレの分析に同意した刀時がそんな結論を述べる。すると、アイティレたちの後方からヒュンと何かが飛んだ。音の速度で空気を切り裂いたそれはカンッという音を立てて、写し身のバイザーに直撃した。だが、写し身の頭部に直撃したそれ――狙撃用の弾丸はバイザーを貫く事はおろか、ヒビを入れる事すら叶わず、カランと地面に落下した。

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