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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1822/2051

第1822話 亀裂を巡る戦い3(5)

「たかが左腕・・・・・・! 安いものだ・・・・・・!」

「ふっ・・・・・・!」

 殺花も発狂してしまいそうな激痛を押し殺しながら、写し身に向かって駆け、右手の闇刃を振るった。プロトも神業の如き剣技で、機械の剣たちと青い煌めきを抜けると、何者をも貫くであろう平突きを写し身に放った。

 メティの稲妻のような爪撃の嵐に、フェリートの剃刀よりも鋭い剣の斬撃、同じく殺花の影で強化された斬撃、そしてプロトの刺突。4人の渾身の攻撃。それは写し身でも対応する事は難しい。その結果――

「・・・・・・」

 4人の攻撃は写し身に届いた。メティの爪撃は浅くはあるが写し身に傷をつけ、フェリートの2刀は深く写し身の体を切り裂き、殺花の闇刃も写し身の首に深く食い込み、プロトの刺突も写し身の腹部を穿った。初めての攻撃の成功。それは、この場にいる者たちにとって、確かな士気の上昇、自信に繋がった。

 だが、

「あ・・・・・・」

「ぐっ!?」

「がっ・・・・・・」

「なっ・・・・・・」

 次の瞬間、メティ、フェリート、殺花、プロトの体を複数のレーザーが貫いた。それは、先ほどプロトが弾いた端末装置が放ったものだった。端末装置による攻撃があれ以来なかっため、そして目の前のチャンスに集中せざるを得なかったことなどもあって、端末装置のことは皆意識から抜け落ちていた。レーザーをまともに食らった4人はドサリと地面に倒れた。

「・・・・・・」

 4人を1度に仕留めるためにわざと攻撃を受けた写し身は、体に刺さっていたプロトの剣を抜き、首に深く食い込んでいた殺花のナイフを抜いた。すると、数秒して写し身の体にあった傷が全て治った。イズの超再生の力だ。当然の事ながら、その能力は写し身にも搭載されていた。

「ぐっ、まだ・・・・です・・・・執事の、技能・・・・・・」

「・・・・・・」

 フェリートは気力を振り絞り、回復の力を使おうとした。しかし、その前に写し身がフェリートをサッカーボールを蹴るかのように蹴り抜いた。

「がふっ!?」

 何かの内臓が潰れる音を聞きながら、ボロ雑巾のようにフェリートが転がる。一瞬で絶望に染まった戦場。その光景を見たエリアはガチャリと銃のスライドを引いた。

「・・・・・・状況は絶望的だな。さて、『芸術家』。お前は奇跡を起こせそうか?」

「・・・・・・悪いが、極めて難しいね」

「そうか。なら、お前は一旦退け。お前が退く時間は俺が何とか作ってやろう」

 エリアがロゼの前に立つ。ロゼは驚いたように目を開いた。

「・・・・・・死ぬ気かい」

「死ぬつもりはないが、その可能性は極めて高いな。だが、逃げるつもりはない。一流は1度引き受けた仕事は途中で投げ出さないものだ」

 エリアが確かな決意を秘めた言葉を述べる。ロゼはエリアの決意を尊重し、一歩を引いた。

「・・・・・・君は本物のプロフェッショナルだよ」

「当然だ。だが、お前ほどの一流の芸術家からの言葉だ。素直に感謝する。最高の報酬だ」

 エリアは小さく微笑むと、写し身に向かって一歩を刻んだ。そして、こう言葉を放った。

「来い」

「・・・・・・!」

 写し身が機械の剣たちと端末装置をエリアに向かわせる。エリアは銃を向け、最後の攻防に挑まんとした。


「――ふんッ!」


 しかし、その瞬間どこからか流星の如き光が奔った。その光は機械の剣と端末装置を全て粉々に砕き壊した。

「「っ・・・・・・!?」」

 その光景にロゼとエリアが驚愕する。なんだ。いったい何が起きた。2人がそう思っている内に、光は地面に降り立った。

「そこの男よ、貴様の覚悟しかと聞かせてもらった。異世界の者がどのような者であるのか分からなかったが・・・・・・まこと、貴様は誇り高き者だ。貴様のような者になら、我が力を貸そう」

 降り立ったのは、少し長めの金髪に浅黒い肌の青年だった。その男――いや、正確にはその竜、『赫雷の竜王』ハバラナスは、エリアとロゼに向かってそう言った。


 ――第3の亀裂、南アフリカ。『赫雷の竜王』ハバラナス、合流。

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