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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1816/2051

第1816話 亀裂を巡る戦い2(3)

「ではワタクシも。それ!」

「よっと」

 クラウンもどこからか小さな闇色のボールを複数出現させると、それらを投げた。ボールには触れた瞬間に爆発する仕掛けが施されていた。ノエも再び矢を放つ。

「・・・・・・!」

 呪符、ボール、矢。自身に向かってくる、3種類の飛び道具を認識した写し身は、右腕の剣で全てを切り裂いた。概念無力化の力を宿す剣で斬られたため、呪符は呪いの力を発動しなかった。

 ただし、クラウンのボールは爆発した。爆発は概念ではなく事象だ。ゆえに、写し身は爆発に巻き込まれた。

「畳み掛ける・・・・・・!」

 双剣を携えたハサンが一気に写し身との距離を詰める。そして、ハサンは体を回転させ、遠心力を利用してその腕を大きく振ると、黒煙越しに写し身の首めがけて、双剣を振るった。

 ハサンの双剣は黒煙を切り裂き、写し身の首を捉えた。そのまま双剣が写し身の首を刎ねる。そう思われた。

 だが、双剣は写し身の首を刎ねる事は出来なかった。ガキンという音が響き双剣は阻まれた。

「っ!? 何て硬さだ・・・・・・!」

 守護者形態のハサンの全力の一撃は、鉄くらいならば切り裂ける。しかし、写し身の体は全く刃が通らない。写し身の体はとてつもなく硬い物質で出来ている。ハサンはそう思った。

「・・・・・・」 

「がっ!?」

 写し身はハサンの認識速度を超える速さでハサンを蹴り飛ばした。その蹴りは、間違いなく普通の人間を、余裕をもって蹴り殺せるだけの威力を持っていた。ハサンは自身の骨が砕け散る音を聞き、飛ばされた。

「・・・・・・」

 写し身は背後の魔法陣から大量の機械の剣を呼び出した。そして、その剣たちにハサンを追い討ちさせた。

「『傭兵』!?」

「『傭兵』さん!?」

「ああ、マズいなこれは・・・・・・」

 真夏、ファレルナが驚愕と心配が入り混じった声を上げ、ノエが顔を曇らせる。このままでは、ハサンは大量の剣に貫かれる事は確実だ。

「やらせないよ」

 ゼノが自身の闇を全て解放する。途端、ゼノの体から高密度の『破壊』の闇が噴き出し、髪が半ば黒く染まる。それは全てを喰らい、全てを破壊する闇だった。そして、ゼノは自分とハサンとの間の空間を壊し、ハサンを無理やり自分の方に引き寄せた。

「クラウン、お願い」

「はいー」

 自分が抱き止めてしまえばハサンが粉々に壊れてしまうため、ゼノがクラウンにそう言った。ゼノの言わんとする事を察したクラウンは、ハサンを受け止めた。

 しかし、ハサンを追い討ちしようとしていた剣はまだハサンと、ハサンを受け止めたクラウンを狙って真っ直ぐに飛んで来ている。ゼノはクラウンにこう指示を出す。

「クラウン、逃げて。あれは俺が何とかする。あと、ファレルナ。悪いけど、少し光を抑えてほしい」

「了解ですー。お気をつけて、ゼノさん」

「は、はい」

 クラウンがハサンを抱えたまま、身軽に後方に飛ぶ。ファレルナも自身の背後から漏れ出る光を出来るだけ抑える。ゼノは飛んだクラウンを守るかのように、剣の前に身を出した。

「さて、もう1回試させてもらうよ。俺の闇が届くのか。今度は全力で」

 ゼノは体から噴き出す闇の出力を高め、その闇を全て右腕に集約させた。ゼノの右腕は超高密度の『破壊』の闇に覆われた黒腕と化した。

破壊の闇ディアプトラ・スコトス

 ゼノが黒腕と化した右腕を振るう。放たれるのは全てを喰らい全てを壊す闇の奔流。機械の剣たちはその闇に呑み込まれた。

 しかし、その剣たちはただの剣ではなく、概念無力化の力を搭載した剣。機械の剣たちは全てを喰らい全てを壊す闇の奔流に抗う。しばしの間、両者は拮抗した。

 だが――

 剣たちは闇を切り裂き、ゼノの体に次々と突き刺さった。

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