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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1815/2051

第1815話 亀裂を巡る戦い2(2)

「っ、どういうつもりよ『聖女』。あいつは闇の力を扱わないわよ。だから、あんたの光で弱体化しないわ。あんたの光は、あくまで闇の力に対してだけ絶大な力を発揮するんだから」

「・・・・・・」

 真夏が逃げながらファレルナにそう問う。真夏の言葉が真実だと示すように、写し身は顔色を崩さなかった。

「分かっています。私の光は今まで闇を照らすのみでした。ですが・・・・・・」

 ファレルナから放たれる浄化の光が徐々にその形を変える。光は幾つかに分かれ固まると、手の形になった。そして、光の手は煌めく極小の刃の群れを包み込んだ。

「私も成長しているつもりです!」

 手が包み込んだ空間が眩い光を放つ。それは浄化の光だった。ファレルナの強すぎる浄化の光が、手の先の空間に圧縮されたのだ。その結果、闇を祓う光は「力」を祓う光となり、青く煌めいていた刃たちはその煌めきを失い、やがて地に落ちた。

「・・・・・・?」

 その光景に写し身が不可解げに首を傾げる。あの極小の刃の群れにも当然概念無力化の力が備わっている。だが、どういうわけか無力化された。写し身のバイザーは、アオンゼウの全ての情報を見通す目の劣化版だ。しかし、基本的な事象を観測し理解する事は出来る。だが、それでもファレルナが何をしたのか、写し身には分からなかった。

「やるじゃない『聖女』! いったい何をやったのよ?」

 真夏がファレルナに称賛の言葉を送る。ファレルナは笑みを浮かべた。

「お褒めの言葉ありがとうございます。ちょっと頑張って、私の光の性質を拡大解釈してみたんです。闇だけでなく、何かを傷付ける『力』も照らせるように。悲しくも、こちらの世界に迷い込んだ異世界の方々と戦う事もあったので、お役に立てるようにと」

 何でもないようにファレルナはそう言った。しかし、ファレルナの言葉を聞いたゼノはチラリとファレルナをジッと見つめた。

「拡大解釈してみたか・・・・・・簡単に言うね。それがどれだけ難しい事か」

 ボソリとゼノはそう呟いた。自身の能力の拡大解釈。それは言わば、形而上における修行のようなものだ。そして、目には見えない分、とてつもなく難しい。ゼノは長い長い時間をかけて、『破壊』の概念をここまで拡大解釈してきた。

 しかし、ファレルナはどうか。ゼノと戦って数ヶ月ばかりで、自身の光を魔機神の写し身に届くまでに拡大させた。初めて戦った時から思っていたが、とても人間とは思えない。ゼノはファレルナが味方でよかったと思うと同時に、末恐ろしさのようなものを感じた。

「・・・・・・流石は最強の光導姫といったところか」

「頼もしいね、ホント」

「いやー、正直かなりキツかったですがー・・・・・・凄まじいお力ですねー」

 ハサン、ノエ、クラウンもそんな感想を述べる。真夏はさあ反撃とばかりに高笑いした。

「はっはっはっ! 『聖女』の光が効くなら、私の呪いも効くはずよ! 効かないなら、私も能力を拡大解釈すればいいだけだわ! やってやるわよ!」

 真夏が右手の袖口から数枚の呪符を取り出す。真夏はそれを写し身に向かって放つ。呪符はまるで意思を持っているかのように、写し身へと向かって行った。

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