第1814話 亀裂を巡る戦い2(1)
「・・・・・・!」
第2の亀裂、イギリス。アオンゼウの写し身第1号が放った破滅の光。対峙していた6人――ゼノ、クラウン、ファレルナ、真夏、ハサン、ノエは地面を蹴り、その光の射線上から逃れた。触れれば間違いなく対象の存在を塵に還すその光は、空間を焼いただけだった。
「本体には効かなかったけど・・・・・・君には俺の力は効くのかな」
ゼノは自身の全身に『破壊』の力を纏わせた。そして、写し身に接近しその右手を伸ばした。
「・・・・・・」
写し身はバイザーの青い単眼をゼノに移した。写し身は右の砲身を剣に変化させると、それでゼノを貫こうとしてきた。写し身の突きはほとんど神速の速度だったが、ゼノは闇人の身体能力、そして天性の戦闘の勘を以て、その突きをギリギリの所で回避した。だが、それでも完全には避け切れずに、剣はゼノの横腹を掠った。しかし、ゼノはそれを気にせず写し身の腹部に触れた。
「・・・・・・やっぱり、効かないか」
『破壊』の力を纏った手で触れても、写し身は壊れなかった。
「・・・・・・」
写し身はゼノに左の蹴りを放つ。ゼノはその蹴りを回避し、1度距離を取った。
「本体がそうだったから今確かめに行ったんだけど、あいつに概念の力は効かないみたいだ。その辺り気をつけてね」
チラリと先程掠った脇腹に視線を落としながら、ゼノが情報共有を行う。脇腹からは少量の黒い血が出ていた。『破壊』を纏ったゼノにダメージを与え、『破壊』に触れられても壊れない。それは、写し身にも概念無力化の力が備わっているという確かな証拠だった。
「はあ!? 本体だけじゃないの!? ああもう、ムカつくくらい無茶苦茶ね! だったら、どう呪えばいいのよ!」
ゼノの言葉を聞いた真夏がふざけるなといった様子でそう叫ぶ。真夏の力の性質は呪い。それは純粋な概念の力だ。
「さあね。でも、何とかするしかないよ」
「敵は恐ろしき機神の写し身。それでも起こして見せなければー。奇跡のショーを! 笑顔のジャグリング!」
クラウンが虚空からクラブを取り出した。右手に3つ、左手に3つを持つと、それを写し身に向かって投擲した。
「攻撃手段がピンとか・・・・・・本当のピエロじゃん」
ノエもクラウンに合わせるように弓を引いた。続けて、ノエは2、3と矢を速射した。
「・・・・・・」
遅い来るクラブと矢に対し、写し身は機械の両翼を広げた。すると、翼の中から青く煌めく何か――その正体は、如何なるモノをも切り裂く極小の刃の群れ――が出現し、クラブと矢を粉微塵に切り裂いた。そして、その青い煌めきはゼノたちの方に向かってきた。
「あ、あれ凄く小さい刃だから触れたら不死以外は死ぬよ。気をつけてね」
「軽く言うわね!」
ゼノの忠告に反応がいい真夏がそう声を上げる。6人はその青い煌めきから距離を取った。
「ゼノさん、クラウンさん。すみません。少し力を強めます!」
闇の力を扱う闇人がいるため、今まで力を抑えていたファレルナが自身の光を解放する。途端、ファレルナの背後から眩い光が放たれた。
「「っ・・・・・・」」
その光にゼノとクラウンが少し顔を歪める。ファレルナの力は無差別だ。今は味方の2人にもその力は襲い掛かる。2人はいま弱体化していた。




