第1812話 亀裂を巡る戦い1(3)
「ちっ・・・・・・!」
レイゼロールは闇色の骸骨兵を大量に呼び出した。骸骨兵は姿が殆ど同じ、亡者に向かって突撃した。空から襲ってくる天使に向けては、闇色の怪鳥を創造し迎撃に当たらせた。
「それも無駄だよ」
レゼルニウスが首を横に振る。亡者に襲い掛かった骸骨兵が剣による一撃を放つ。一撃を放った剣は亡者に触れた瞬間に黒い塵と化した。そして、亡者が骸骨兵に触れると、骸骨兵も同じく黒い塵へと還った。空中では天使がどこからか輝く武器を取り出し、それに斬られた怪鳥は光の粒子となって霧散した。
「彼らは種類こそ違うものの、その身に死を纏っている。死に触れればどうなるかは、君もよく知っているだろう」
「っ・・・・・・」
続けられたレゼルニウスの説明にレイゼロールが漆黒の瞳を見開く。その言葉が本当ならば、レイゼロールの攻撃の殆どは亡者や天使には効かないという事だ。
「ならば・・・・・・!」
レイゼロールは自身から噴き出す闇を硬質化させ、剣の形に固めた。そして、その闇の剣で亡者を、空を駆け天使も切り裂いた。切り裂かれた亡者は黒い粒子となって、天使は輝く粒子となって消えた。
「・・・・・・これならば効くという事だろう」
「うん。同じ死の力である『終焉』なら冥界のモノに対応する事は可能だ。だけど・・・・・・」
レゼルニウスが右手をレイゼロールに向ける。すると、空間から紫炎が生じ、そこから何かが這い出て来た。それは人の形をしていたが、当然の事ながら人ではなかった。
「第2の冥獄、焔の影。レール、君はこの焔に何を見るかな」
「っ? 何を・・・・・・」
意味深なその言葉にレイゼロールが疑問から眉を顰める。すると、視界内に入っていた人の形をした炎の中にある光景が浮かび上がった。
「これは・・・・・・」
その光景はかつてレイゼロールと影人が森で暮らしていた時のものだった。それはレイゼロールの幸せな記憶の1つだった。
そして次の瞬間、レイゼロールの腹部を激痛が襲った。
「がっ・・・・・・」
「・・・・・・隙だらけだよ」
痛みでレイゼロールの意識が強制的に現実に呼び戻される。激痛の原因は剣だった。いつの間にか、レゼルニウスがレイゼロールに接近し、闇色の剣で腹部を貫いていたのだ。『終焉』を発動しているレイゼロールに傷をつけられるという事は、この剣も冥界のものだろう。しかし、問題はそれよりも、
「ぐっ・・・・どう、やって・・・・近づい・・・・た」
「敵である僕が素直に教えると思うかい? だけど、君は僕の愛する妹だ。結局、僕は君に対する甘さを捨て切れない。いや、捨てられない。だから、教えよう」
レゼルニウスは悲しそうな顔を浮かべ、こう答えた。
「さっき僕が呼び出したのは、幻影を見せる冥界の地の国の炎だ。見た者の記憶の中の幸せな光景を映す。つまりは、幻術だよ」
「がふっ!?」
レゼルニウスが剣を引き抜く。同時に大量の赤い血が噴き出した。




