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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1810/2051

第1810話 亀裂を巡る戦い1(1)

「ふっ・・・・・・!」

 第1の亀裂、ロシア。互いに地を蹴った事により、一瞬で距離が近づいたレイゼロールとレゼルニウス。まず先制の攻撃を放ったのはレイゼロールだった。レイゼロールは強烈な右の蹴りを行った。

「おっと。うん、いい蹴りだね」  

 レゼルニウスはその蹴りを左腕で受け止めた。余裕たっぷりに微笑んだレゼルニウスに、レイゼロールは未だに胸を締め付ける懐かしさと、ほんの少しの苛立ちを覚えた。

「・・・・・・兄さん、我とあなたは今敵なんだぞ」

「そうだね」

「なら・・・・・・そういった態度はやめてもらいたい・・・・・・!」

 レイゼロールは自身の体に『加速』の力を施すと、神速の速度で連撃を繰り出した。その攻撃に一切の躊躇いはなかった。

「『加速』か。なら僕も」

 レゼルニウスも自身の肉体に『加速』の力を付与した。レゼルニウスの力の属性も闇。そして、レゼルニウスは神だ。ゆえに、レイゼロールと同じように自由に闇の力を扱える。レゼルニウスはレイゼロールの連撃を全て対応した。

「格闘も力に頼り切ったものじゃない。そういえば、君は一時格闘の修練をしてたね。その時の経験が生きてるのかな」

「っ・・・・・・本当にずっと我を見てきたのだな。兄さん」

 レゼルニウスの言葉を聞いたレイゼロールが思わずそう言葉を漏らす。レイゼロールが格闘の修練をしていたのは、ゼノと出会う前の10年間ほどだ。その事実は本来、レイゼロールしか知らない。だが、レゼルニウスはその事を知っていた。それは一種の証明だ。

「うん。ああ、もちろん水浴びだとかトイレだとかの場面は見ていないよ。それは僕の名誉に誓って――」

「・・・・・・兄さん。さっきから言っている。我とあなたは敵だ」

 レイゼロールは氷のように冷めた目でレゼルニウスを見つめると、周囲から闇色の腕を大量に呼び出した。それらは一斉にレゼルニウスに掌を向けると、その先から闇色の光線を放った。

「っ!」

 レゼルニウスは咄嗟にその場から飛び退いた。次の瞬間、何百条もの闇色の光線が放たれ氷原を穿った。氷は一瞬にして蒸発し、大量の水蒸気が出現する。レイゼロールの姿はその水蒸気に隠された。

「・・・・・・そして、敵とは倒すものだ」

 レゼルニウスの背後から冷たい声が飛ぶ。レゼルニウスが振り返ると、そこにはレイゼロールがいた。水蒸気が発生した瞬間に短距離間の転移を行なったのだろう。つまりは、レゼルニウスが避けて水蒸気が発生する事を計算した動き。

「砕き切れ。我が拳よ」

 レイゼロールが一撃を強化する言葉を唱え、闇を纏わせた右の拳を引く。完全に不意を突かれたレゼルニウスはその一撃を腹部に受けた。

「ぐっ!?」

 途端、バキメキ、グシャリという嫌な音がレゼルニウスの体内から響いた。前者は骨が砕け散った音で、後者は内臓が潰れた音だろう。レゼルニウスはそのまま殴り飛ばされた。

「がはっ、げほっ!」 

 氷原を転がったレゼルニウスは大量に吐血した。赤い血が氷原を染める。そして、激痛がレゼルニウスを襲った。

「い、痛みを感じるなんて・・・・・・いつぶりかな・・・・・・それに、自分の血を見たのも・・・・・・」

 レゼルニウスは回復の力を使用し傷を癒した。立ち上がったレゼルニウスをレイゼロールは離れた場所から見つめていた。

「・・・・・・兄さん。我は兄さんが死んでから絶望と冷たさを得た。それは長い間我に染み付いた。・・・・・・影人が生きて我と約束を果たしてくれた時に、絶望は抜けた。だが・・・・・・冷たさはまだ抜けてはいない」

 レイゼロールはゆっくりとレゼルニウスの方に向かって一歩一歩を刻んで行く。

「我はそれが必要な事ならどんな事だってする。本当に大切なモノを守るためなら、心すら切り離してみせる。例え、敬愛するあなたを傷付ける事になっても、我は戦うぞ」

「そうか・・・・・・それほどの覚悟か」

 レイゼロールの強い決意を宿した目。それを見たレゼルニウスは一瞬目を閉じた。

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