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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第181話 掴んだ答え(1)

 時は少し遡る。

「はー、面倒臭い。あいつ1人だけ逃げやがった」

 1人周囲が黒に塗りつぶされた空間に残されたスプリガンは、ガリガリと頭を掻いた。

「まあ、あの雑魚闇人にこの空間を構築し続けて、俺を閉じ込めるなんてことは出来んだろうし、しばらくすりゃあ戻れるんだろうが・・・・・・・」

 それではつまらない。どうにかすぐに元の世界に戻る方法はないか。

(あいつの意識はまだ何も感じねえ。まあ、当然だな。今回は前やレイゼロールの時とは違う。あいつの意識がある時に体を乗っ取ったんだ。普通なら半永久的にこの肉体は俺のものだ)

 戻る方法と並行して悪意はそんなことを考えた。そう。通常であれば、意識のある時にこの体を乗っ取っれた時点で自分の勝ちだ。この体の主導権はほぼ自分のもの。

 だが、悪意は知っている。この帰城影人という人間がどこか普通の人間とは違うことを。

(本質が闇っていうのももちろんおかしいが、何よりおかしいのは、あいつの精神の強さだ。この前の無意識的に俺に抗ってきた事といい、今回だって肉体を乗っ取っるのにそれ相応の時間がかかった)

 精神の強さ。意志の強さとでもいうその強度がこの体の持ち主は異常だった。普通、あれほどの意識の強さがこの年頃の人間に形成されることはない。――それこそ、何か特殊な経験でもなければ。

「・・・・・・やっぱあの領域に関係があんのかね。ま、今はこの事は置いとくか。戻れる方法も思いついたしな!」

 だが、悪意はそこで思考を切り替えると意地の悪い笑みを浮かべた。平行して戻れる方法を考えていたが、今その方法を思いついたのだ。

「あの闇人はここを存在しない空間だなんだとか言ってやがったが、実際に存在してるって事はこの空間自体の強度はそれほどでもねえはずだ。なら――」

 悪意は右手に膨大な闇の力を集めた。集められた力が黒いオーラとして可視化する。悪意はその闇に「破壊」の性質を与えると、突然その右手を大きく振りかぶった。

「この空間を壊しちまえばいい!」

 それは言わば世界を壊すことと同義。そして当然そんなことは不可能だ。それは悪意も変わらない。

 だが、この空間に限って言えばそれは別だ。元々存在しないのに存在しているという大きな矛盾を孕んだこの空間は、圧倒的に現実の世界と比べて強度が低い。そしてそれほどの強度ならばこの空間を「壊す」ことは、理論上可能だ。

「ぶっ壊れろォォォォォォォォッ!」

 闇により「破壊」の力を付与された右手が強烈な拳となって放たれた。普通ならその拳は虚しく空を切るだけのはずだったが、拳は見えない壁にぶち当たり、それを砕いた。

 そして、それと同時にこの存在しないはずの空間にヒビが入っていき、やがてこの閉じた世界は完全に砕かれたのだった。

 その結果、悪意は元の世界へと帰還した。

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