第1808話 忌神の神殿(3)
「でも、実際真面目にこの城を登って行くのは効率が悪いよね。ただでさえ時間がないんでしょ。だったら、やっぱり何か時短できる方法は考えないと」
暁理が影人の提案に一部同意しそう言った。暁理の指摘に黒いフード姿の壮司は頷いた。
「そうだな。何か上手い具合に方法を考えねえと。スプリガンさんよ、ぶっ壊さないでショートカット出来そうな方法はないか? あんたの力って万能なんだろ」
「確かに俺の力はどんな形にも変化できるが・・・・・・壊さないでってなると難しいな。・・・・・・いや、もしかしたら転移なら行けるか?」
影人はその可能性に気がついた。一応、外からこの城の最頂部は見ている。ならば理論上、転移は可能だ。だが、影人の中にイヴの声が響いた。
『転移は出来ねえぞ。この建物の中は転移不可エリアになってるっぽいからな。後、適当に解析してたが、ここはシスの野郎がいた城とほとんど同じだ。物理的に壊す事はほぼ不可能な素材で作られてる。だからまあ、真面目に行くしかねえな』
「マジかよ・・・・・・ちっ、流石の性格の悪さだなあの野郎」
影人は小さく舌打ちをした。この建造物は影人たちが入って来た時点で扉が閉まっている。不壊属性に転移禁止エリアという特性がある以上、影人たちに残された道は限られていた。
「ん? というか、君の声なんか聞き覚えがあるな。うーん、すぐそこまで出かかってるんだけど・・・・・・」
暁理が壮司の方を見ながら唸る。すると、壮司は「何だ。まだ気づいてなかったのかよ」と言い、少し呆れたような顔を浮かべた。
「俺だよ。隠す必要なくなったから言うが、スケアクロウだ。実は守護者ランキング4位『死神』は俺でしたーと」
壮司がフードを取る。壮司の顔を見た暁理はフードの下でその目を大きく見開いた。
「なっ・・・・・・!? か、かかし!? 嘘だろ君だったのか!? しかも、守護者ランキング4位!? 君が!?」
「その呼び方、やっぱり直らねえなアカツキさん」
壮司がヘラリと笑う。壮司の素顔を初めてしっかりと見た陽華と明夜も驚いた顔を浮かべる。
「あ! あの時の!」
「まさかランキング4位だったなんて・・・・・・」
「ああ、そういえばお2人さんともスケアクロウの時に共闘してたな。改めて守護者ランキング4位『死神』案山子野壮司だ。薄汚れた罪人だが、世界のために命を懸けて頑張るんでよろしくな」
壮司がペコリと頭を下げる。この場にいる者たちは皆光と闇の最後の戦いの場にいた者たちだ。そのため、壮司がレイゼロールを殺そうとしていた事、そのために暗躍している事を知っていた。
「案山子野さん、そんなにご自身を卑下することは・・・・・・」
「いや事実だからな。でもまあ、聞いてて気分はよくねえか。悪かった。余計な事言っちまったな」
そんな壮司に光司はそう言葉をかける。だが、壮司は首を横に振った。そして、申し訳なさそうに苦笑した。
「・・・・・・実は誰が誰々でしたなんてこと話してる場合か。さっさと行くぞ。・・・・・・ちなみにそれを言うなら、アカツキの正体は早川暁理だ。朝宮と月下はまだ気づいてないみたいだがな」
「ちょ影人!?」
「「え!?」」
急に正体をバラされた暁理が驚き、影人の言葉通り気づいていなかった陽華と明夜は、驚愕の声を上げた。




