第1807話 忌神の神殿(2)
「やっと入って来ましたか。それにしても、案外に大所帯になりましたね」
「忌神の神殿」最頂部。そこから、影人たちが神殿内に侵入してくる様子を見ていたフェルフィズは、そう呟いた。この神殿内部には至る所にカメラが仕掛けられており、フェルフィズはそれを自由にモニターに映して見る事が出来た。
「報告します製作者。各端末、戦闘を開始しました」
「そうですか。アオンゼウの器を解析して作った量産機・・・・・・数こそ4体と少なく性能もオリジナルよりかは劣りますが・・・・・・それでも魔機神の写し身です。たかだか光導姫と守護者、闇人程度が勝てる存在ではない。例え、彼らが協力しても」
最低でも4つの亀裂が安定する事はない。フェルフィズはそう確信していた。
「さて、何やら抗っている形跡は見えますが、境界の崩壊が完全に終わるまで大体3〜4時間といったところですか」
自身の背後にある大きな亀裂の状態を計測していたフェルフィズがそんな判断を下す。計測は完全に正確とはいえないが、大きな時間のズレはないはずだ。
「まあ、それまでの間、存分に楽しませてもらいましょうか。ねえ、イズ」
「・・・・・・私に楽しむという感情はありません」
「・・・・・・そうですか」
イズは無感情にそう答えた。その答えを聞いたフェルフィズは少し残念そうな顔になった。
「まあ、いずれ分かりますよ。今はまだ自覚できないだけでしょうから」
ふっとどこか優しげに笑ったフェルフィズは、モニターに視線を戻した。
「さあ、影人くん。私の神殿を存分に楽しんでください。そして、私たちのいる場所まで辿り着いてください。今日ここで・・・・・・私とあなたの物語を終わらせましょう」
そして、忌神はモニターに映る、自分との数奇な縁を持つ少年にそんな言葉を送った。
「見た目から分かってはいたが・・・・・・やっぱり広いな」
神殿内に足を踏み入れた影人は周囲を見渡した。1階部分は黒を基調とした広大なホールで、奥の方には上階に登るためのスロープのようなものが見えた。
「・・・・・・面倒だから、やっぱりぶっ壊してショートカットした方がよくねえか」
「うるさいわよバカ。内部で建物を壊したら私たち全員下敷きになるでしょ。どこまでバカなのよ」
先ほどの話を蒸し返した影人に、ダークレイが軽蔑の目を向ける。バカバカと言われた影人は少しカチンと来た。
「バカバカうるせえぞ。崩落くらいどうとでも出来る。あと、バカバカ言われるのは月下・・・・・・ブルーシャインの専門だ。言うならブルーシャインに言え」
「え!?」
とんでもないとばっちりを受けた明夜が驚愕する。無理もない。もし球技で例えるなら、誰かが真っ直ぐ飛んでいたボールを遠く離れた所から見ていたら、急にボールが物理法則ではあり得ない曲がり方を見せ、その見ていた誰かにぶつかって来た感じだ。理不尽が尋常ではない。
「・・・・・・これがバカなのは大体分かるわよ。でも、あんたもバカなのは変わらないわ」
「これ!? バカ!? ちょっと急に酷過ぎるわよ2人とも! 私はバカじゃない! 名誉毀損よ!」
ダークレイにもバカ呼ばわりされた明夜が抗議の声を上げる。そんな明夜に一同は苦笑いを浮かべた。




