第1806話 忌神の神殿(1)
「お前ら・・・・・・」
現れた7人を見た影人は少し驚いたように、その金の瞳を見開いた。
「・・・・・・何だ。案外早く来たわね。でも・・・・・・人選がムカつくわ。何であんたらが援軍なのよ」
ダークレイもやって来た者たちにそんな感想を述べる。ただ、かつて自分と戦い実質的に勝利した陽華と明夜に対しては、少しだけ顔を不快げに歪ませた。
「な、何でって言われても・・・・・・それはもちろん、帰城くんの力になってイズを救うためだよ!」
「イズを救うって言った言い出しっぺは陽華で、それに最初に賛成したのが私なのよ。その私たちが来ないのは色々とおかしいでしょ」
陽華は両手を握り、明夜はそう言ってダークレイに言葉を返した。
「・・・・・・別におかしくはないわよレッドシャイン。あんた、相変わらず無駄に明るくて鬱陶しいわね」
「無駄に!? ひ、酷い!」
「まあ、確かに陽華は明る過ぎるところがあるものね」
「なに他人事みたいに言ってるのよ。あんたも鬱陶しいわよブルーシャイン。中身は暑苦しいくせに外側はクールぶってるのが」
「ぶってる!? 言いがかりだわ! 私は見た目も中身もクールな女よ!」
ダークレイの言葉を受けた陽華と明夜が軽く悲鳴を上げる。一応、戦場だというのに先程までの空気はどこへやら。空気は一気に緩んだ。
「はあー・・・・・・相変わらずだな。お前らが来ると大体こんな空気になる気がするぜ。このシリアスブレイカーどもが」
「あのさ、君がそれ言う? スプリガンの雰囲気で誤魔化してるけど、君も相当痛い事言ってる感じでしょ。冷静に考えたら、それもシリアブレイカーじゃないの」
「うるせえぞ暁・・・・・・光導姫アカツキ。俺の場合は必要事項だ。断じてそんなものじゃない」
エメラルドグリーンのフードを被った暁理がフードの下からジトっとした目を影人に向ける。影人は暁理の言葉を明確に否定した。
「・・・・・・この感じで今からラスボスの城に乗り込むのか? ちょっとというか、だいぶと心配になるな・・・・・・いやまあ、いつもヘラヘラしてる俺が言える事じゃないかもだけどよ・・・・・・」
「大丈夫ですよ『死神』。むしろ、気負い過ぎる方がよくないですから」
「そうそう♪ 緊張感は適度にね♪」
「ええ。私たちは光導姫。正の感情が力になりますから」
困ったような心配したような顔を浮かべる壮司に、光司、ソニア、風音が明るく笑う。壮司は「まあ、そうだな」と最終的には諦めたように笑った。
「とにかく、みんなであの城に乗り込もう! 大丈夫! 私たちはみんなで戦ってるんだから、絶対に勝てるしイズを救えるよ!」
「そうよ。友情パワーの力を見せつけてやりましょう。友情パワーは無敵だわ」
いつの間にか、すっかり元通りの様子に戻った陽華と明夜。真っ直ぐでどこまでも明るい2人の言葉に、ソニア、風音、光司は頷き、壮司も「はっ、あんたらが言うと説得力があるな」と小さく笑った。
「何であんたらが仕切ってるのよ。ムカつくわね」
「友情パワーの中に俺を入れるな。俺は孤高なんだよ」
だが、ダークレイと影人はムッとした顔になった。闇の力を扱う組の文句を、しかし陽華と明夜は無視した。
「行こう!」
「行くわよ」
陽華と明夜が城に向かって歩き始める。その歩みには確かな決意が見えた。
「だから仕切るな。ちっ、本当にムカつくわ」
「おい無視するな名物コンビ。俺は孤高で孤独な・・・・・・」
「まだ言ってるの君・・・・・・? 見た目は変わっても、本当中身はアレだね。終わってる」
「あはは、まあスプリガンの見た目で、影くん全開の言葉はまだちょっと違和感あるよね」
「そうかな? 帰城くんはいつだって帰城くんだよ。素晴らしくもカッコいい」
「光司くん・・・・・・?」
「10位くんはあれか。残念イケメンってやつか?」
2人の後にダークレイが続き、影人、暁理、ソニア、光司、風音、壮司もそれに続いた。そして、9人の少年少女は忌神の潜む異形の神殿の中へと進んで行った。
――第6の亀裂、日本。光導姫レッドシャイン朝宮陽華、光導姫ブルーシャイン月下明夜、光導姫アカツキ早川暁理。『歌姫』ソニア・テレフレア、『巫女』連華寺風音、『死神』案山子野壮司、『騎士』香乃宮光司、『闇導姫』ダークレイ、スプリガン、忌神の神殿への潜入開始。




