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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第18話 男神ラルバ(3)

「え? 何でですか?」

 ラルバの言葉に明夜が疑問の声を上げる。その疑問は陽華も思ったことだ。

「守護者というのは光導姫を守る存在だ。守護者には光導姫と同じように、人間離れした身体能力はあっても、君たちのような特別な力はないんだよ。守護者の他の能力はというと、武器を一つ召喚できるくらいしかない」

「じゃ、じゃあ、スプリガンは一体何者なんです?」

「それは俺にもわからない。男は光導姫になれないし、守護者を生み出せるのは俺だけだ。別に疑っているわけじゃないが、君たちの言うスプリガンという奴が本当にいるなら、それは神の俺にもわからない謎の存在だ」

 ラルバは何か警戒したように思案顔になる。隣で話を聞いていた光司もひどく驚いた顔をしている。

「ソレイユにはこの話は?」

「あ、はい。もうお話しました。ですが、ソレイユ様も何も知らないって・・・・・。一応、ソレイユ様もスプリガンは守護者ではないだろうって、言っておられたんです。でも、それでも・・・・!」

 ラルバの問いに陽華は言葉を振り絞った。そうだ、わかっていた。スプリガンが守護者ではないであろうことは。前にソレイユと会ったときにそう言われた。

 だが、諦めきれなかった。もしかしたら、万が一でもスプリガンは守護者かもしれない。光司という守護者に助けられた陽華は彼にスプリガンを重ねた。

「陽華・・・・・」

 明夜が親友の名を呼ぶ。正直、明夜には陽華がどうしてもう一度スプリガンに会いたいのかわからない。確かに明夜ももう一度スプリガンに会いたいとは思う。だがそれは、しっかりと彼に感謝の言葉を言いたいからだ。親友と自分の命を助けてくれたスプリガンに明夜はそっけない言葉でしか、感謝の言葉を伝えていない。

「・・・・・そんなにそいつに会いたいのかい?」

 陽華の態度から何かを察したのだろう、ラルバは陽華にそう問いかけた。

「は、はいッ! も、もう一度だけでも彼に、スプリガンに会いたいんですッ!」

「ッ!?」

 頬を上気させながら自分の思いを話す陽華を見て、ズキリと光司の心が痛んだ。

(何だ・・・・・なぜ僕の心は痛むんだ?)

 光司が正体不明の痛みに困惑している間に、ラルバはほんの少し口角を上げて空を見上げた。

「そうか、いいねえ青春だ」

「え?」

 ラルバの言葉に陽華は不思議そうな顔をした。どうやら、まだちゃんとは自分の思いを理解していないようだ。

 ラルバはそんな陽華を見て心が暖かくなった。そして再び陽華の顔を見ると、こう言った。

「よし、俺の方でも色々調べてみよう。俺もそのスプリガンってヤロウは気になるしな」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

「よかったね、陽華!」

 陽華が花が咲いたような笑顔で、ラルバに感謝の言葉を述べる。明夜も嬉しそうに陽華の肩を叩いた。ただ、光司だけが複雑そうな顔をしている。

「さて、真面目な話も終わったし、お茶会を楽しもうか!」

 ラルバがパンと手を叩き破顔した。ラルバの言葉通り、それから一同はお茶会を楽しんだ。

「そういえば、今更なんですけど、ラルバ様はなんでこっちの世界にいることができるんですか?」

 紅茶を飲み干した明夜が本当に今更ながらその事を聞いた。

「ん? ああ、確かに俺たち神は普段は神界にいるけど、別にこっちの世界に来れないってわけじゃないんだ。ただ、こっちの世界では君たちと同じ肉体で活動してるから、色々と不便ってだけなんだよ」

「へぇー、そうなんですか。じゃあ、ソレイユ様もこっちの世界に来ることができるんですか?」

 ラルバの話を聞いていた陽華が明夜に続けてそんな質問を投げかける。

「確かに、ソレイユもこっちの世界に来ることはできるけど、それは難しいな」

「え? 何でですか?」

()()()()()()()()()()()()()()。ソレイユは、レイゼロールの闇奴を唯一浄化するこのできる光導姫を生む神だ。今も闇奴は世界のどこかに出現しているかもしれない。ソレイユは世界中から闇奴の気配をいち早く察知して、光導姫に知らせ、必要があれば転送しなければいけない。それをするには神界に留まるしかないんだよ。こっちの世界に来ると、神の権能は使えないからね」

 ラルバはゆっくりとその理由を語った。一見、無表情に見える顔にどこか苦悩に満ちたような瞳を伏せながら。

「そんな・・・・じゃあ、ソレイユ様に自由な時間はないんですか?」

 明夜が信じられないといった顔でラルバを見た。

「ないことはないよ。レイゼロールもどこかで休息は取るだろうしね。ただそんな時間は限りなく少ない。しかも、神界にいる神は睡眠も食事も取らないで平気だからね。ソレイユがこっちに来たのなんて、それこそ何百年前になるかな」

 陽華と明夜は絶句した。前に神界に行ったときは、そんな感じは毛ほども感じなかった。あの慈愛と優しさに満ちた女神の姿が二人の脳裏に蘇り、二人はどうしようもない、悲しい気持ちを抱いた。だが、それよりも二人の心にはソレイユに対する感謝の心を抱いた。

「ソレイユ様・・・・・いつも私たち、人間のために頑張ってくれてるんだね」

「そうね・・・・・ソレイユ様のために私たちができることは一つしかないわ、陽華」

「うん、明夜」

 二人はガシッとお互いの手を握ると、息を合わせて宣言した。

「「私達がレイゼロールを倒して、ソレイユ様を自由にする!」」

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― 新着の感想 ―
[一言] 数百年前に殺意を人間に抱いたってのはこの時かな?
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