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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1796/2051

第1796話 決戦の狼煙(5)

「・・・・・・そうか。奴が動いたか」

「忌神との決戦の幕が開けた、という事ね」

 神界から地上に戻った影人はシェルディア宅に来ていた。そして、レイゼロールとシェルディアに現在の状況を伝えた。家主であるシェルディア、シェルディアの呼び出しを受けたレイゼロールは、それぞれそう言葉を述べた。

「遂にこの時が来てしまったのですね・・・・・・」

「はぁー、もう最悪・・・・・・」

 影人の話を聞いていたのはシェルディアとレイゼロールだけではない。すっかりシェルディア宅の住人になっていたキトナと、元からの住人であるキベリアもそんな言葉を漏らした。ちなみに、ぬいぐるみもいたが、ぬいぐるみは「何かピンチみたいだね!」的に軽く首を傾げていた。

「今言ったみたいに俺は日本の亀裂に行く。レイゼロール、お前は他の亀裂を頼む。あと、出来れば闇人たちも亀裂に向かわせてくれ。フェルフィズの事だ。そう簡単に亀裂を安定させないために、何か仕掛けてるに決まってる。戦力は多いに越した事はないからな。符は光導姫か守護者が持ってるだろうから、協力するように頼むぜ」

「・・・・・・分かった。すぐに亀裂を安定させて、我もお前のいる所に向かう。だから、無理はするなよ影人」

「お前もな。嬢ちゃんは悪いが、一旦向こう側にいる白麗さん達を呼びに行ってくれるか? 使い走りみたいな役をさせて悪いんだが・・・・・・」

「了解よ。私も白麗たちをこちらの世界に呼び次第、すぐにあなたの所に向かうわ」

「ありがとう」

 影人は素直に了承してくれた2人に感謝の言葉を述べた。

「さて、じゃあ俺も亀裂に向かうか」

 影人が席から立ち上がる。影人に続くように、レイゼロールとシェルディアも立ち上がった。

「レイゼロール、あなた闇人たちに情報を伝えた後はどの亀裂に向かうつもりなの?」

「どこでもいい。それこそ適当に――」

 レイゼロールがどうでも良さそうな様子で言葉を紡ごうとした時だった。突然、世界にある気配が奔った。

「っ・・・・・・!?」

「あら、何かしらこの気配。初めて感じる気配ね。でも、どことなく似た気配を感じた事があるような・・・・・・」

 その気配を感じたレイゼロールは驚いたような顔になり、シェルディアは少し不思議そうに首を傾げた。

「・・・・・・レイゼロール」

 影人がレイゼロールの名を呼ぶ。影人もその気配を感じ取っていた。そして、その気配の主が誰なのか分かっていた。それはきっと、自分の中にあの力があるからだ。彼から託されたあの力が。 

「・・・・・・ああ、分かっている」

 影人の言わんとしている事を察したレイゼロールが頷く。そして、レイゼロールはシェルディアにそのアイスブルーの目を向けた。

「シェルディア、我はロシアにある亀裂に向かう。行かねばならない理由が出来たからな」

「・・・・・・そう、分かったわ」

 レイゼロールの事情を何となく察したシェルディアは何も言わずに頷いた。今奔った気配の発信地はロシアの辺りだ。レイゼロールの今の言葉と数日前に影人から聞いた話。それを合わせれば答えは見えてくる。

「だが、まずは1度拠点に戻らねばな。『十闇』は既に再召集してある。キベリア、行くぞ」

「ううっ、分かりました」

 レイゼロールはキベリアを伴って転移した。後に残ったのは、影人とシェルディア、そしてキトナとぬいぐるみだ。

「じゃあなキトナさん。毎度悪いがまた待っててくれ。すぐに終わらせてくるからよ。お前もまたな」

「その子としばらくの間お留守番をお願いね。滅多な事は起きないと思うけど、何か危険が訪れたらこの紙を使って私を呼んでちょうだい。使い方は書いて燃やすだけよ。終わったら、また観光に行きましょう。あなたにはまだまだ見せたい場所があるから」

 影人とシェルディアがキトナにぬいぐるみに対してそう言い残す。キトナとぬいぐるみはそれぞれ頷いた。

「ええ、是非に。皆さん、お気をつけて。私、ちゃんと待っていますから」

「! (行ってらっしゃい!)」

 キトナとぬいぐるみから見送りを受けた影人とシェルディアが玄関から外に出る。そして、影人はスプリガンに変身し亀裂へと向かい、シェルディアは適当な亀裂から向こう側の世界に渡った。

 

 ――こうして、忌神との最後の戦いが始まった。

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