第1795話 決戦の狼煙(4)
「別に正しい判断だとは思ってねえよ。冷静に考えなくても、俺がゴリ押した判断は愚かの極みみてえな判断だろうぜ。だが・・・・・・後悔はねえよ。例え世界をより危険に晒しても、いけ好かない奴の罠だとしても、あいつらが出会えるなら・・・・・・それは何よりも価値がある事だ」
影人はとある兄妹を思い浮かべた。あの兄妹はどちらも自分の恩人だ。あの2人がいなければ、今の自分はここにはいない。あの2人のためなら、影人は大抵の事はやれるつもりだ。
「まあ、任せてくれよ。絶対にフェルフィズは俺が、俺たちが止めてみせる。だから大丈夫だ」
力強く影人はそう断言しきった。むろん、影人の言葉を保証できるものは何1つない。だが、それでも影人に恐れや不安などいったものは一切なかった。
「・・・・・・根拠のない言葉ですね。ですが、いいでしょう。私はあなた達を信じます」
「もちろん吾も信じてるぜ。全ての世界において、お前のことを1番信じているのは吾だからな」
「けっ、お前に信じられても何にも嬉しくねえよ」
零無に対し影人は嫌そうな顔を浮かべた。零無の言葉は色々とシャレでは済まない。
「伝える事は全て伝えました。帰城影人、これは時間との戦いです。境界が崩壊する前にあなた達がその符を6つの亀裂に貼ればあなた達の勝ち。逆に間に合わなければあなた達の負けです」
「ああ、分かった」
最後の確認に影人はしっかりと頷いた。
「では行きなさい。私たちはここで出来るだけ時間を引き伸ばしますが、残された時間はそれほど多くはありません」
「寂しいがまた一時の別れだな。ああ、吾とお前を引き裂く世界なんていっそ壊れてしまえばいいのに。まあ、吾とお前が別れる事になった原因はフェルフィズの奴だから、しっかりあのバカを殺してきてくれ」
「・・・・・・決着はつける。じゃあなシトュウさん、零無。そっちは頼んだぜ。行ってくる」
シトュウと零無に送り出された影人は数秒後真界から姿を消した。
「そういう事になった。ソレイユ、ラルバ。悪いが、お前たちは光導姫と守護者に情報を伝えてくれ。俺はこの後、嬢ちゃんやレイゼロールと会って情報を伝える」
真界から一旦地上に戻った影人は神界のソレイユのプライベートスペースに来ていた。影人は先ほどシトュウと零無から聞いた情報をソレイユとラルバに伝えた。
「っ、なるほど・・・・・・分かりました。今すぐに光導姫たちに伝えます」
「ああ、僕も守護者に伝えるよ」
「頼む。後、何人か戦闘力が高い光導姫と守護者・・・・・・具体的にはレイゼロールとの決戦にいたようなメンツか。ああいう奴らを亀裂に向かわせてくれ。今回は符を貼る都合上、ある程度戦力を分散させなきゃならないからな。取り敢えず、ソレイユ。お前に符を4枚渡しておく。これを光導姫か守護者に渡してくれ」
影人はそう言うと、ソレイユにシトュウから預かった符を4枚手渡した。
「それは分かりましたが・・・・・・残りの2枚はどうするつもりなんですか?」
4枚の符を受け取ったソレイユが影人にそう聞いてきた。
「1枚は俺が請け負う。俺はフェルフィズがいるだろう日本の亀裂に行くつもりだ。で、もう1枚はレイゼロールに渡す」
「レールにですか? というか、影人あなた1人でフェルフィズやイズと戦うつもりですか。いくら何でもそれは危険では・・・・・・」
「分かってる。別に無茶をするつもりはねえよ。あくまで俺は先兵みたいなものだ。どうせ、1番手間取るのは俺が行く亀裂だろうからな。他の奴らは他の亀裂を安定させて日本の亀裂に来ればいい。多分だが、最終的にはそうなるぜ」
「・・・・・・そうだね。君の予想通りだと思う」
ラルバが同意する。必要な情報を全て2人に伝え終えた影人はソレイユにこう言った。
「そういうわけだ。じゃあ、俺は地上に戻る。ソレイユ、頼む」
「分かりました。影人、ご武運を」
「ありがとよ」
いつもの無事を祈ってくれる言葉に影人が感謝の言葉を述べる。そして、影人は神界から姿を消した。




