第1794話 決戦の狼煙(3)
「・・・・・・話は分かったぜ。要は決戦の狼煙が上がったんだな」
約10分後。真界の「空の間」に呼び出され、シトュウと零無から話を聞いた影人は、真剣な顔でそう言葉を述べた。
「端的に言えばそういう事です。帰城影人、あなたやあなたの仲間には彼の忌神を止めてもらいたい。私はあなた達に忌神との決着を希望します」
「任せろよ。言われるまでもなくそうするつもりだ。あの野郎には何回も逃げられちまったが・・・・・・本当にこれで最後にしてやる」
シトュウの言葉に影人が力強く首肯し、グッと右手を握る。フェルフィズ。影人とは過去の世界から因縁があり、光と闇の戦いにおける全ての元凶となった神。絶対に許す事は出来ない者だ。負の感情が影人の中に渦巻く。
「あと、悪いがシトュウさん。細かいが他の奴らを俺の仲間って呼ぶのはやめてくれ。あいつらとの多くは、ほとんどただの協力関係だ。俺は孤高の一匹狼。群れることはしないんだよ」
「・・・・・・よくもまあ、このような状況下で真顔でそんな事を言えますね。大した人間です」
ここだけは譲れないといった感じでそんな事を言ったバカ中のバカ野郎に、シトュウは呆れ果てた。零無は「ははっ、流石は影人だな」と恋は盲目っぷり全開といった感じで笑っていた。
「はぁ・・・・・・とにかく、具体的にフェルフィズを止めるためにも、あなたにこれを渡します」
シトュウは軽く息を吐き自分の心をリセットすると、どこからか6つの短冊のようなものを取り出した。その短冊は透明で一部がクリアに、ところどころに紫色の装飾が施されていた。
「これは?」
「私と零無の力が込められた符です。それを先ほど言った6つの大きな亀裂に貼れば、私と零無が直接干渉する事が出来ます。私と零無の力が込められていますから、何をしてもそう簡単に消し去る事は出来ません。これを手分けして亀裂に貼ってください」
手渡された物を見てそう呟いた影人に対し、シトュウが説明を加える。その説明を聞いた影人はなるほどといった様子で首を縦に振った。
「了解だ。それで、デカい6つの亀裂の場所は?」
「国の名前で言うのなら、アメリカ、アルゼンチン、イギリス、ロシア、南アフリカ、そして日本です。詳細な座標はここに」
シトュウは座標を示した紙を追加で影人に渡した。影人はそれも受け取った。
「ありがとな。しかし、日本か・・・・・・もしも、フェルフィズの奴がいるとしたらあいつの事だ。間違いなくここにいるな」
「だろうね。フェルフィズの奴も亀裂に干渉されれば元通りの状況になる事は分かっているはずだ。だから、亀裂を守ろうとするだろう。そして、日本の亀裂は自分で守っている可能性が高い。あの機械人形、確かイズだったか。あれと共にね」
影人の呟きに零無が自身の見解を述べる。その言葉を聞いた影人は少しの間沈黙すると、こう言った。
「・・・・・・じゃあ、あいつも6つの亀裂の内のどこかにいるな。亀裂を守るために」
「・・・・・・そうですね。まず間違いなく」
影人が言ったあいつというのが誰なのか理解したシトュウが小さく頷く。
「・・・・・・帰城影人。私は未だにあの時のあなたの判断が正しかったとは思えません。あなたの判断は敵に戦力を送る事と同義でした。そして、今回彼は敵となった。それも強力な」
「・・・・・・ああ。分かってるよ」
シトュウが透明と紫のオッドアイで影人を見つめる。影人は様々な思いが滲んだ声でそう返事をした。




