第1790話 忌神の勧誘(4)
「おや、気づきましたか。よく気付いたというべきか、今更というべきか・・・・・・ええ、そうです。あなたを亡き者にしようと画策したのは私ですよ」
そして、フェルフィズはレゼルニウスの言葉を肯定した。何でもないように笑いながら。
「っ、やっぱり・・・・・・よくもまあ、僕の前にのうのうと姿を現せたものだな」
「面の皮の厚さには自信がありましてね。まあ、長く生きていると自然とそうなるとも言えますが」
レゼルニウスが暗い感情を滲ませた言葉を放つ。フェルフィズはそれを受け流すかのように、ヒョイと肩をすくめた。
「さて、本題に入りましょうか。実は折り入ってあなたに話があるんですよ」
「・・・・・・自分を殺した原因を作った奴の話を聞くと思うのかい」
「おや、質問をしてきたのはあなたですよ。随分と身勝手な方ですね」
フェルフィズは芝居掛かった仕草でやれやれのポーズを取った。
「別に話を聞きたくないというのであれば、それで結構。私たちはすぐにここから去りましょう。ああ、先程から応援を呼ぼうとしているようですが無駄ですよ。この辺り一帯に連絡を遮断する結界を既に張ってありますからね」
「・・・・・・バレてたか」
レゼルニウスは冥界の神の力で発信していた、目には見えぬ力の波動のようなものを停止させた。道理で誰もこの場に駆け付けないわけだ。
「・・・・・・なら、話を聞こう。死ぬほど嫌だけどね」
「ははっ、死んでいる神が言える言葉ですかねそれ。面白いジョークだ」
レゼルニウスはせめて何か情報を得ようとそう言った。フェルフィズはレゼルニウスの神経を逆撫でするような言葉を放ち、笑った。
「で、今度こそ本題、私たちの目的ですが、まあ私たちも仲間が欲しいと思いましてね。それで、あなたに私たちの仲間になってもらえないか。ええ、そう思ったわけですよ」
「・・・・・・・・・・・・は?」
唐突にフェルフィズが明かした目的。それを聞いたレゼルニウスは、思わずポカンとした顔を浮かべた。
「何を・・・・・・何を言っているんだ?」
「? 別に言葉通りの意味ですよ」
訳がわからないといった様子でレゼルニウスが問い返す。フェルフィズは軽く首を傾げながらも、そう答えた。
「違う。言葉の意味は分かっている! どういうつもりだと僕は聞いているんだ! 僕があなたの仲間になる? あるわけがないだろうそんな事は! あなたは僕を殺すように仕向け、僕の妹に深い悲しみと絶望を与えた者だ! そして、それだけでは飽き足らず現世を破壊しようとしている! 僕はあなたを許さない! あなたは邪悪だ。邪悪そのものだ!」
レゼルニウスは声を荒げ自身の本音をぶちまけた。今までなんとか感情を抑えてはいたが、レゼルニウスはレイゼロールを絶望に突き落としたフェルフィズを激しく憎んでいた。その憎しみが、今のフェルフィズの言葉で表層に露われた。
「邪悪そのものですか。中々な評価ですね。まあ、あなたが素直に頷かないのは分かっていました。なので、私から1つ提案をしましょう。レゼルニウス、あなたが私たちの仲間になってくれるのなら・・・・・・あなたの妹に会わせてあげましょう」
「っ・・・・・・!?」
その提案にレゼルニウスの顔色が明確に変わる。その言葉は激しくレゼルニウスの内に響いた。




