第1783話 光司と影人(2)
「男子高校生の遊びといえばゲーセンだ。つーわけで、適当に遊ぶぞ」
数十分後。影人と光司は近所のゲームセンターに来ていた。男子高校生の遊び=ゲームセンターという図式は些か古い気がしないでもないが、前髪野郎は流行ガン無視系の高校生なので、その辺りの認識は時代遅れというか少し鈍かった。
「ここがゲームセンターか・・・・・・初めて来たけど、何だかすごい場所だね」
「何だよ。お前ゲーセンも初めてなのか? 本当に高校生かよ。つーか、普段お前休みの時何やってんだ。ゲームとかはやらねえのか?」
「そうだね。ほとんどやらないかな。昔父さんとレトロゲームをやった記憶はあるんだけど・・・・・・僕は休みの日は読書だったり、勉強だったり、色々な習い事をしているから」
「うわ、マジかよ。読書抜いたらそれ休みじゃねえだろ。俺なら絶対耐えられねえ」
光司の答えに影人が心底嫌そうな顔を浮かべる。完璧イケメンを形作っているものの一端を、影人は垣間見た気がした。
「なら、最初は俺が適当にゲーセンを案内してやるよ。それで興味のあるゲームがあったらやればいい」
「ありがとう。じゃあ、案内をお願いするよ」
影人と光司は共にゲームセンターの中を巡り始めた。影人はまず定番のクレーンゲームのコーナーに光司を連れて行った。
「これがクレーンゲーム。金を入れてクレーンを動かして景品を取るゲームだ。ぶっちゃけると、基本的に数回で取れる事はない。だが、欲しい景品とかがあると中々やめられない。人間の欲望を刺激してくるゲームだ」
「へえ、これが・・・・・・面白そうだね。ちょっと見て回ってもいいかい?」
「ああ、好きにしろよ」
光司と影人は色々なクレーンゲームを見て回った。お菓子やぬいぐるみやフィギュア。様々な景品がある事に光司は驚いていた。
「うわっ、可愛いねこのぬいぐるみ」
光司が足を止める。光司の視線の先には小さなペンギンのぬいぐるみがあった。
「確かにな。でも意外だな。お前でもこういうのを可愛いと思うのか」
「あ、ごめん。子供っぽいよね」
「何で謝るんだよ。別に悪いとは言ってないだろ。好きな物に年齢が関係あるかよ。俺もこいつは可愛いと思うぜ」
光司が恥ずかしそうな顔を浮かべる。影人はそんな光司にそう言って同意を示した。
「っ、そうだね・・・・・・ありがとう帰城くん。君の言葉はいつも僕の目を覚まさせてくれるよ」
光司が感謝の言葉を述べる。それは光司の心からの言葉だった。
「大げさな事を言うな。で、どうするんだ。やってみるのか?」
「うん。せっかくだから。帰城くん、やり方を教えてくれるかい?」
「いいぜ。小銭はあるか?」
「ちょっと待ってね」
光司がサイフを取り出して中身を確認する。流石お金持ちといった感じで、サイフの中には一万円札が大体20枚くらいは入っていた。影人は反射的に「いいなー」と思ってしまった。
「ごめん。小銭はないね」
「じゃあ両替しないとな。ちょうどそこに両替機があるから両替するぞ」
両替機で一万円札を両替し100円玉を手に入れた光司と影人は、ペンギンのぬいぐるみがあるクレーンゲームの前に戻った。




