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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1775/2051

第1775話 陽華と影人(2)

「あー、お前はあれだよな春野。いつか攫われないように気をつけろよ本当」

「え、何でですか?」

 困ったような心配したような顔で頭を押さえる影人に、海公がキョトンとした顔で首を傾げる。容姿がコンプレックスの海公には悪いが、容姿と相まって一々仕草が可愛らしい。

「世の中いろんな奴がいるからだよ。で、遊びに行きたいって話だったな。そうだな。今日は特に予定もないし・・・・・・」

 影人がOKの返事を返そうとする。だが、唐突に海公はその顔色を変えた。

「っ、また・・・・・・すみません影人さん! 自分から誘っておいて何ですが、急用を思い出しました! 本当にごめんなさい!」

「お、おう・・・・・・」

 海公は影人に深く頭を下げると、鞄を持ち、走って教室を出て行った。影人はそんな海公を見送った。

「相変わらず大変だな守護者は・・・・・・」

 海公が走っていったのは、まず間違いなく守護者としての仕事からだろう。今は教室にはいないが、もしかすれば魅恋も光導姫として現場に向かっているのかもしれない。零無とシトュウが2つの世界に軽い世界改変を行って混乱を抑えていたとしても、完全ではない。意識せずに亀裂に入り違う世界に迷い込む場合もある。流入者の問題は解決してはいないのだ。

「暇になっちまったな・・・・・・帰るか」

 影人はそう呟くと自分も鞄を持って教室を出た。












 1階に降りた影人はのんびりとした歩調で昇降口を目指した。昇降口で自分の靴に履き替えた影人は外に出る。

「そうだ。久しぶりに本屋にでも寄るか。最近チェック出来てなかったし・・・・・・」

 癖である独り言を呟きながら影人が晴れた空の下を歩く。すると、前方に見知った背中が見えた。

「ん、あれは・・・・・・朝宮か」

 影人の少し前を陽華が歩いている。珍しい事に陽華の隣に明夜の姿はなかった。

「・・・・・・見つかったら面倒くさい予感がするな。見つからないようにするか」

 取り敢えず距離を取って、適当なところで陽華とは違う道に行こう。そう考えた影人は少し歩調を遅くして、陽華と一定の距離を維持した。何というか、さすが前髪野郎である。何があっても自分からは声を掛けないという鋼の意志を感じる。

「・・・・・・中々進路が分かれないな」

 正門を出てしばらく歩いた頃、影人はポツリと小さな声を漏らした。本屋へ行くには、今のところ陽華と同じ道を行くしかないのだが、偶然か陽華は中々違う道には行かなかった。まさか、同じく本屋が目的地というオチだろうか。それだけは勘弁願いたいと影人は心から願った。

「ううっ、どうしよう・・・・・・」

 影人がそんな事を思っていると、前方に困ったような顔で街路樹を見上げる少年の姿が見えた。大体小学校低学年くらいだろうか。少年は木に引っかかっている赤い風船を見つめていた。ベタなパターンではあるが、何だかんだ、影人はそんな光景を初めて見た。

「どうしたの僕? あ、風船が引っ掛かっちゃったの?」

「う、うん」

 影人同様に困った様子の少年に気づいた陽華が、少年に声をかけ木を見上げる。少年は困ったような泣きそうな顔で頷いた。よくもまあ当然のように声を掛ける。流石のお人好しだなと影人は感心半分、呆れ半分に思った。

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