第1766話 語らい2(1)
「眠い・・・・・・つか怠い。加えて授業が全然分からねえ・・・・・・」
放課後。全ての授業を終えた影人は机に突っ伏していた。影人は世界改変の効果でずっとこちらの世界にいる事になっていたが、実際には影人は異世界に行っていた。そのため、出席は問題ないがノートなどを取っていないため、授業が全く分からないという問題を抱えていた。
「だ、大丈夫ですか帰城さん。何だか凄く疲れているみたいですけど・・・・・・」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと学生っていう職業の面倒くささを思い出しただけだ。悪いが、今日は疲れたから1人で帰るぜ。すまねえな」
「いえ、僕は全然。分かりました。お気をつけて」
海公は相変わらず男とは思えぬ可愛らしい明るい笑顔で影人にそう言った。影人は立ち上がり海公に軽く手を振ると教室を出た。
ちなみに、海公は守護者ではあるが世界改変の影響を受けていた者の1人だ。世界改変の影響を受けない条件は「スプリガンの正体が帰城影人」だと知っている者と限定されていた。
「おい帰城。少し待て」
「? 何ですか先生」
影人が廊下を歩こうとすると、教室の中から出て来た影人のクラスの担任――榊原紫織に呼び止められた。紫織は気怠げな様子で影人にこう言ってきた。
「お前、ここしばらくずっと小テストは0点で提出物も出していないのはどういうつもりだ? 各教科の担任がカンカンだぞ。授業は出席だけしていればいいってものじゃないんだ。ただでさえお前は・・・・・・分かるな?」
「あー・・・・・・はい。すんません。ちょっとここ最近忙しかったもので。次からはちゃんとやりますんで。はい」
「ならいい。私も面倒な説教なんてしたくはないからな。ちゃんとやれよ。流石にまたお前の面倒を見るのは嫌だからな」
紫織はそう言うと教室の中に戻って行った。影人は軽く右手で頭を抱えた。
「はぁ・・・・・・あー、マジかよ。テスト全部0点で提出物は全部未提出って・・・・・・その辺りの事は考えてなかったぜ。ちくしょう、最悪だ・・・・・・」
新たな絶望を突き付けられた前髪はトボトボと歩き始めた。マズい。非常にマズい。このままではまた留年しかねない。紫織も先ほど言葉を濁していたが、懸念していたのはそういう事だ。次に留年すれば今度こそ終わりである。
「・・・・・・ダメだ。このままだとフェルフィズとの決戦の前に俺の精神が終わりやがる。よし、ここは気分転換に久しぶりにゲーセンにでも行くか」
遊ばないとやってられない。そう思った影人は学校を出て1人ゲームセンターを目指した。




