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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1760/2051

第1760話 無機なる心をこの手は救えるか(3)

(はっ、相変わらず主人公してるなお前らは・・・・)

 その様子を見ていた影人は内心でそう呟いた。かつての宿敵からそう言われ、正面から答えてみせる様はまさしく物語の主人公だった。

「・・・・・・お前はどうなのだ影人」

 すると、レイゼロールが視線を影人へと移してきた。残る者はただ1人。かつて光と闇の間を揺蕩った暗躍者であり、イズと戦った影人だけだ。自然と全員の注目が影人へと集中した。

「・・・・・・そうだな。どうするべきなんだろうな。確かに朝宮の意見は一理ある。倒すって方法しか思いつかなかった俺らとは違う、一考するに値する意見だと思う。何より、選択肢が増えるのはいい事だ」

「・・・・・・ならば、お前は賛成か?」

 レイゼロールがそう言葉を挟む。影人は「まあ聞けよ。まだ話は終わってないんだ」と言葉を返した。

「だが、反対側の意見も正しい。命を懸ける戦いで敵を救うなんざ、矛盾もいいところだ。戦いの精神状態にも影響を与えるだろうし、何よりリスクもある。敵を救う事に固執して味方を死なせる事もあるからな」

「・・・・・・なら反対か?」

「別にそうでもねえよ。揺れてるんだ俺は。だから、どうするべきなんだろうなって最初に言ったんだよ」

 今度はシスがそう聞いてくる。だが、影人は1度首を横に振ると、自分の正直な気持ちを吐露した。

「ただ・・・・・・あいつは、イズには感情があるように感じた。例え武器に宿った意思だったとしても、その意思が無機質な神の器の中に入っていたとしても・・・・・・無機質なモノに宿った意思が必ずしも無機質なものじゃないんだ。あいつの意思は限りなく無機質に近いが、完全に無機質なものじゃない。それだけは言えると思うぜ」

 イズの事を思い出しながら、影人はそう付け加えた。その事が示すものが正確に何であるのかは、発言者である影人にも分からない。ただ、気づけば影人は右の拳を軽く握っていた。

「ふん、アオンゼウの中に入っているものに感情があるからなんだというのだ。結局、貴様はどっちつかずという事ではないか」

「うっ、ハッキリ言うな・・・・・・だがまあそうだよ」

 シスの指摘に影人は気まずそうに軽く息を吐いた。

「だが・・・・・・必ず答えは出す。次にあいつと戦うまでにはな。朝宮、月下。取り敢えず、お前らはその考えを捨てなくていい。今持ってるだけなら害はないからな」

「うん、分かった。ありがとう帰城くん」

「たまには優しいのね」

「たまには余計だ月下」

 陽華と明夜が影人に笑顔を向けてくる。影人は明夜にそう言うと水を一口飲んだ。

「ふぅ・・・・・・まあ問題はまだまだあるが、今日はこれくらいにしようぜ。どうせ、今はほとんど何も出来ないからな。正直、ちょっと疲れてるから少し休みたい気分なんだ」

「そうね・・・・・・フェルフィズがこちらの世界に戻ってまだ数時間しか経っていない。今すぐに動くというわけではないでしょう。しばらくは準備・休養期間にしましょう」

「呑気・・・・・・とも言えんか。いいだろう」

 影人の提案にシェルディアとシスが同意を示す。影人の意見に反対するものはなく、場の空気が少し弛緩した。

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