第1759話 無機なる心をこの手は救えるか(2)
「・・・・・・私はそうは思いません。想いが伝われば、きっと敵とだって分かり合えます。確かに時間は掛かってしまうかもしれない。だけど、それでも分かり合える可能性はあるはずです。だから、私も陽華の意見には耳を傾けるべきだと思います」
「・・・・・・ふん」
ソレイユは隣にいるレイゼロールをチラリと見つめながら自分の意見を述べた。ソレイユの視線に気づいたレイゼロールは顔を背けた。
「ふむ、我らが光の女神がそう言うのならば、私も賛成せざるを得ないようだね。確かに、本来私たち光導姫は倒す者ではない。救う者だ。剣ではなく手を向ける。そうだね。現代に生きる私たちにはそのような姿勢が求められるはずだ」
「うん。私も賛成♪ ラブアンドピースの精神はいついかなる時も捨てちゃダメだからね♪」
「私は正直一概に賛成とは言えませんが・・・・・・一理あるとは思います。選択肢としてあってはいいのではないかと」
「甘いけど、私も賛成よ! だってそっちの方が後味いいし!」
ロゼ、ソニア、風音、真夏といった他の者たちもイズを救うという意見に理解を示す。今この場にいる光サイドはほとんどの者が賛成という感じだ。
「そうね・・・・・・私も面白そうだし賛成という事にしておくわ。確かに、必ずしも倒す必要はないのだし」
「わ、私も賛成で。そうすれば戦わなくてもいいし、魔法の構築もしなくていいし・・・・・・」
シェルディアに続くようにキベリアも賛成した。だが、シェルディアは「あら何を言っているのキベリア」とキベリアに不思議そうな目を向けた。
「それはやるのよ。そうしないと説得が失敗した時に困るでしょ」
「そんな!?」
キベリアが今日何度目かの悲鳴を上げる。結局、キベリアのやる事自体は変わらなかった。
「私は反対ですよ。説得なんて無意味に決まっています。私たちが今このような状態になっているのは、あくまでレイゼロール様と癪ではありますが・・・・・・帰城影人がいたから実現したことです。誰とも何の関わりもないフェルフィズの大鎌の意思を説得して敵ではなくなるなど・・・・・・空想もいいところだ」
「・・・・・・俺も反対かな。あれは人じゃない。説得は感情を有してる生物にしか通じないよ」
「ふん、俺様は言わずもがな反対だ」
「・・・・・・私は今アオンゼウの中に入ってる子の事は知らないけど・・・・・・やっぱり難しい事だとは思う」
フェリートとゼノは反対の意見を述べた。続くようにシスやシエラも意見を述べる。
「さて、なら後は・・・・・・影人、レイゼロール、そして守護者の彼の意見かしら」
シェルディアがまだ意見を述べていない3人に視線を送った。
「僕は・・・・・・かつてとある人物を信じきれなかった。誰かを、何かを信じきるという行為はとても難しい事だったから。昔の僕なら、多分朝宮さんの意見には反対していたと思う。でも、今の僕は違う。僕は朝宮さんの意見を取り入れてもいいと思います。選択肢はあった方がいい。僕は、かつてレイゼロールを浄化した朝宮さんと月下さんを信じます」
「香乃宮くん・・・・・・」
「・・・・・・ありがとう」
光司は確かな意志を宿した顔でそう言い切った。光司の意見に陽華と明夜は暖かな顔になった。
「ふん・・・・・・ダシに使われているようであまりいい気分ではないな」
「ダシではなくてあくまで先例よ。それでレイゼロール。あなたはどういう考えなの?」
不快そうな顔を浮かべたレイゼロールにシェルディアはそう問いかける。レイゼロールは少しの間黙ったままだったが、やがて口を開いた。
「・・・・・・我は正直どちらでもいい。そのフェルフィズの大鎌の意思を倒そうが封じようが、我にはどうでもいいからな」
「あら・・・・・・意外ね。あなたは反対側だと思っていたけど」
シェルディアが言葉通りの表情になる。レイゼロールを知る者は大体シェルディアと同じ感想を抱いたため、少し驚いたような顔を浮かべていた。
「言っただろう。ただどうでもいいだけだ。フェルフィズさえ討てるのならそれでいい。・・・・・・ただ、やると言ったからからにはやってみせろよ、光導姫。無機なる心をその手で救ってみせろ」
「っ、うん! 任せて!」
「もちろんよ」
レイゼロールが陽華と明夜にアイスブルーの瞳を向ける。陽華と明夜はレイゼロールの瞳を見つめ返ししっかりと頷いた。




