第1755話 作戦会議(2)
「1番厄介なのは数の差が機能しない事だね。帰城くんの話だと、敵は視界内ならどこからでも絶対不可避の絶対死の一撃を放って来る。戦力という概念が意味をなさない」
「香乃宮の言う通りだ。あの大鎌は不死だろうが殺す。普通の奴が喰らえば言わずもがなだ。今のところ、あの大鎌の一撃を喰らって死なないのは『終焉』状態の俺とレイゼロールくらいだが・・・・・・それでも斬撃自体は喰らうからな。ったく、何で俺の敵はこうも反則級の奴が多いんだろうな」
シェルディア、レイゼロール、零無。今では味方だが、かつて敵だった者たちを思い浮かべながら影人はため息を吐いた。
「だが、泣き言を言っても現状は何も変わらねえ。俺たちはあいつらを止めなきゃならない。世界を、命を、平穏を願うならな。だから、ここにいる奴ら全員の力を貸してくれ。足りないなら、ここにはいない他の奴らの力も借りる。今回ばかりは、全員が協力しないとどうにもならないからな」
「「「「「っ・・・・・・」」」」」
影人は座りながら全員に対して頭を下げた。普段捻くれていて1人で何でも解決しようとする影人が素直に他の者たちを頼る。極めて珍しい光景に、特に陽華、明夜、光司、ソニア、ロゼ、が驚いた表情になる。基本的に、その5人は影人が素直になったところをほとんど見たことがない者たちだった。
「もちろん。私に出来る事ならなんでも」
「仕方ないわね! この私が手を貸してあげるわよ!」
風音、真夏は特に驚く事もなく素直にそう答えた。そして、陽華、明夜、光司、ソニア、ロゼもやがてその首を縦に振った。
「うん。当然! 私たち全員が力を合わせればどんな困難だって打ち砕けるよ!」
「そうよ。今度は世界のために、みんなが力を合わせる。王道中の王道よ。こんな熱い展開で負けるはずがないわ!」
「もちろんだよ。君の力になれるのなら、そしてそれが世界のためだというなら、僕は僕の全力以上を懸けるよ。光栄だよ」
「私も協力するよ♪ 私の歌、敵さんにも届けちゃおう♪」
「私もぜひにその世界の敵とやらを描きたいからね。僭越ながら力を貸そう」
「・・・・・・ありがとうよ」
影人は5人に感謝の言葉を述べる。すると、コーヒーを飲んでいたシスが「ふん」とつまらなさそうな顔でこう言葉を続けた。
「そんな有象無象がいくらいたところで無駄だ。ただ死ぬだけだぞ」
「お前の言おうとしてる事は分かるが・・・・・・こいつらは有象無象じゃねえよ。こいつらは頼れる奴らだ。それは俺が保証する」
シスの言葉に影人はしっかりとした口調で反論した。ずっと光導姫や守護者をスプリガンとして影から見守ってきた影人は、彼・彼女たちの強さをよく知っている。ゆえに、そこだけは譲る事が出来なかった。




