第1747話 元の世界への帰還(2)
「――影人たちが亀裂から元の世界に戻ったか。はあ、残念だ。本当なら、今すぐにでも飛びつきに行っているはずだったのにな」
真界「空の間」。力を使って影人たちを観察していた無色もしくは透明の髪が特徴的な女――零無は残念そうに息を吐いた。
「そのような事を言っている場合ですか。崩壊は止められましたが、まだまだ危険な状況である事に変わりはありません。気を抜かないでください、零無」
そんな零無に対し薄い紫の髪が特徴の女――シトュウが注意の言葉を投げかけた。
「別に気は抜いてないよ。というか、普通に呼び捨てか? 敵対していた前なら別に気にしなかったが、今は吾がお前に協力してる側だろ。もうちょっと言葉遣い考えろよ。昔みたいにさ」
「無理ですね。私が尊敬していたあなたは既に死んでいますから」
「即答かよ。しかも、中々に毒舌だな。本当、お前は変わったなぁシトュウ。昔からお前を知ってる身としては感慨深いぜ」
「気安いですよ。私は仕方なくあなたに力を分け与え、ここに入る事を許したのです。あなたは永遠の罪人。その事を忘れないことですね。そして、もしあなたが再び暴走すればその時は・・・・・・」
シトュウが少し厳しい目を零無に向ける。シトュウにそう言われた零無は「はっ、分かっているよ」と言って言葉を続けた。
「今更好き勝手に力を振るったりはしない。吾の欲しいものはもう手に入っているからな。ただ、お前も忘れるなよシトュウ。今回吾が協力してやっているのは全て影人のためだ。影人と吾が過ごす世界を存続させるために、吾は今頑張ってやっているんだぜ。でなけりゃ、こんな事はしていない」
「・・・・・・元凶がよくもまあそう言えますね。開き直りというか恥知らずというか・・・・・・」
「吾だからな。基本的に全ての事象と存在は吾よりは下だ。恥は知らんな」
零無はフッと笑った。そんな零無にシトュウは呆れたような顔を浮かべた。
「それよりも現在の状況です。境界の崩壊はあなたの『無』の力と私の『時』の力で止める事が出来ています。2つの世界にも、私とあなたで軽い世界改変をかけて混乱は抑えられている。ただ問題は、やはりフェルフィズ、それと魔機神アオンゼウを器としているフェルフィズの大鎌の意思・・・・・・イズの情報が識れないという事です。あの者たちを討たない限り危機は去りません」
「まあな。多分、全知の力で識れないのはあの大鎌関係だ。あの大鎌に付与されている力は全てを殺す力。フェルフィズとそのイズって奴の情報を知るという因果でも殺されてるんだろうぜ。じゃなきゃ、全知の力から逃れる事なんて出来ないからな」
シトュウの言葉に零無は適当にそう言葉を返した。現在のシトュウと零無は2人で『空』。以前の同じ状態の時は、どちらも全知の力や世界改変の力を使えなかったが、それは2人が協力しなかったからだ。互いに協力すれば、全知の力や世界改変の力は使う事が出来る。それで、シトュウと零無は改めてフェルフィズ、そしてイズがどこにいるのか識ろうとしたのだが、結局2人の居場所は分からなかった。




