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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1746/2051

第1746話 元の世界への帰還(1)

「――っていうわけで、俺たちは元の世界に戻らなきゃならなくなった。・・・・・・だから、悪いな。旅はここまでだ。キトナさん」

 フェルフィズがヘキゼメリを崩してから約1時間後。影人たちは、一旦血影の国の不夜の祖城に戻っていた。そして、影人は城で待機していたキトナに今までの事情を話し、そう告げた。

「・・・・・・そうですか。それは、大変な事になりましたね。ええ、私の事は気になさらないでください。皆さんは、皆さんの為すべき事をなさってください」

 影人の言葉を受けたキトナは重々しく頷くと、真剣な顔で影人や、その周りにいたシェルディア、ゼノ、フェリートにそう言葉を述べた。

「ありがとう。そう言ってくれると助かるわ。ああ、でもキトナ。別にあなたが望めば、私たちに着いて来てもいいのよ。こんな時に言うのはあれだけど・・・・・・正直、ワクワクするでしょ? 違う世界に行くことは」

「っ、シェルディア様。戯れが過ぎますよ」

 どこか悪戯っぽい顔でそう言ったシェルディアにフェリートが咎めるように言葉をかける。だが、シェルディアは「別に戯れではないのだけれどね」と軽く息を吐いた。

「ただ、あなたにとって向こう側の世界は未知で、色々と勝手は違うわよ。向こうではあなたのような獣人はいない。行くなら自分を偽らなければならない。それでも、あなたは来たい? キトナ、あなたに選択肢をあげるわ。さあ、どうするの?」

「で、でも、私が着いていけば足手纏いになるのでは・・・・・・」

「別にそんな事はないわよ。ねえ影人、ゼノ?」

 シェルディアが影人とゼノにそう振った。影人とゼノはそれぞれこう答えた。

「まあ、正直今までとあんま変わらないからな。キトナさんが着いてきたいってなら、好きにしたらいいと思うぜ」

「俺も同じかな」

「ほら、2人もこう言ってるでしょ。あなたもそう思うわよね? フェリート」

「はあー・・・・・・ええ、そうですね」

 フェリートは諦め切ったようにシェルディアに同意した。ここで反論しても無駄だということをフェリートは既に悟っていた。

「ほら、全員いいって言ってるわよ。キトナ、あなたの素直な心に従いなさい」

「わ、私は・・・・・・」

 キトナは一瞬逡巡した様子になった。しかし、やがて決心したようにその両の目を見開いた。

「行きたいです。私も影人さん達の世界に一緒に行きたい。だから皆さん、私も連れて行ってください!」

「いい答えね。そうよ、キトナ。いついかなる時でもチャンスは掴まなくてはならないわ」

 キトナの答えを聞いたシェルディアは満足そうに頷いた。

「やれやれ・・・・・・」

「ん、改めてよろしくね」

「はっ、自分の欲望に素直になるのはいいことだぜ」

 フェリート、ゼノ、影人もそれぞれの反応を示した。すると、ずっと影人たちの近くにいたシスがイスから立ち上がった。

「ふん、くだらん話は終わったか。終わったのならば、さっさと異世界とやらに行くぞ」

「分かっているわよ。幸い、亀裂は所々に広がっているから、どこからでも向こうの世界には行けるはずよ」

 亀裂の先の空間は影人たちの世界に繋がっている。その情報を影人から聞いた(影人はシトュウから聞いた)シェルディアはシスの言葉に頷いた。

「というか、あなたも着いてくる気なのね。いいの? どれくらいの時間が掛かるかは分からないけど、この世界を留守にして」

「当然だ。あのふざけた神をこのままにしておくなど、俺様の矜持が許さん」

 シスは不機嫌そうな顔を浮かべると、こう言葉を続けた。

「そして、少しの時間俺様が留守にしたところで問題はない。俺様の同胞は弱くはないからな。それは貴様も知っているはずだ」

「・・・・・・ええ、そうだったわね。私としたことが愚問だったわ」

「そういう事だ。しばらくの間、この国は任せたぞハジェール」

 シスはそばに控えていたハジェールにダークレッドの瞳を向けた。

「謹んで承りましたシス様。この国のことは私や、同胞たちにお任せください」

 ハジェールが恭しく腰を折る。シスはハジェールから視線を外すと影人たちに視線を移した。

「行くぞ。案内しろ、お前たちの世界にな」

「はっ、分かったよ。案内してやるよ、真祖サマ」

 影人がシスに対しそう返答する。こうして、影人たちは唐突に自分たちの世界に帰る事になったのだった。

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