第1744話 足掻く理由(3)
「おお、怖い怖い。ですが、私は真実を言ったまでですよ? 何をしようと、もう世界間の境界が崩れのを止める事は出来ないのですから」
「長生きのくせに知らないのね。この世に絶対はないのよ」
障壁越しにシェルディアはそう言い放つ。その言葉を受けたフェルフィズは鼻で笑った。
「負け犬の遠吠えにしか聞こえませんね。イズ」
「はい」
障壁を解除したイズはシェルディアとシスに対し大鎌を振るった。不死殺しの大鎌は流石の2人も避けざるを得ない。シェルディアとシスは一旦フェルフィズたちから距離を取った。
「さて、この世界に留まる理由もなくなりましたし、そろそろここを離れるとしましょうか。イズ、割れた空間の先がどこに繋がっているか分かりますか?」
「はい。・・・・・・どうやら、この空間の先は隣接する世界に繋がっているようです。つまり、制作者や私の本体が元いた世界です」
イズはアオンゼウの目で亀裂の走った暗い空間の情報を解析した。そして、そう答えを述べた。
「ほう、それは好都合。色々と手間が省けたというものだ」
イズの答えを聞いたフェルフィズはニィと笑った。元々、フェルフィズがこちらの世界の霊地を崩したのは自分がいた世界、つまりは影人たちの世界を壊したかったからだ。せっかくならば、壊したかった世界が混乱し崩壊する様を見てみたい。フェルフィズはそう考えた。
「行きますよイズ。いや、帰るというべきですかね。私たちの世界に」
「了解しました」
フェルフィズとイズが近くにあった大きな亀裂に近づいて行く。
「逃すと思う?」
「貴様らの贖いはまだ終わっていないぞ・・・・・・!」
だが、シェルディアとシスは2人を逃すまいとその右手に禁呪を纏わせる。シェルディアとシスが超神速の速度でフェルフィズに再接近し、禁呪を纏わせた手を伸ばした。その速度にフェルフィズは反応出来ない。フェルフィズだけなら、そこで勝負が決まってもおかしくはなかった。
「邪魔です」
「っ・・・・・・!」
「ちっ・・・・・・!」
だが、そこには魔機神の器に宿った「フェルフィズの大鎌」の意思、イズがいた。イズは真祖化した2人の速度に対応すると、再び全てを殺す大鎌を振るった。シェルディアとシスは紙一重でその斬撃を避ける。イズは2人を払うかのように乱雑に大鎌を振るい続けた。
「では、機会があればまたお会いしましょう。崩壊した世界でね」
「・・・・・・」
フェルフィズは最後にそう言い残すと、亀裂の中へと消えて行った。イズも警戒しながらシェルディアとシスを見つめ続けながら、後退するように亀裂の中へと消えて行った。
「・・・・・・本当、厄介ね」
「・・・・・・必ず、このままでは済まさんぞ」
フェルフィズとイズが消えて行った亀裂を睨みつけながらシェルディアとシスはそう呟いた。敵を逃してしまったという事に、2人は屈辱を抱いていた。
『・・・・・・帰城影人、あなたの近くにいる精霊を使って少しだけ時間を稼ぎなさい。1つだけ、私に境界間の崩壊を止める策があります』
一方、影人の思いを聞いたシトュウは影人に念話でそう語りかけた。




