第1740話 天狐の助力(3)
「いま妾が話している最中じゃ。もう少し大人しくしておれ」
白麗は呆れと不機嫌が混じったような顔になると、再び「流転の戻」を使用した。結果、イズは再び5秒前の状態と位置に戻った。
「戻ったところで・・・・・・」
イズは再び白麗に接近する。だが、白麗に接近した所でまたも戻された。
「言い忘れておったが、お主には既に『流転の戻』を5回掛けておる。解けるまでお主はどこにも行けんぞ。イズとやらよ。後、ついでにお主の主人を攻撃しておくかの」
白麗はイズにそう告げると、空間から尻尾を呼び出し機械人形に守られているフェルフィズに攻撃した。機械人形たちはフェルフィズを守ろうとするが、尾によって叩き潰されていった。
「これで少しは話せるかの。帰城影人よ、今のお主なら奴を倒す方法が分かるな?」
「ああ。あいつの精神に直接死を叩き込む。体の方は情報を知った今、どう滅したらいいのか分からねえが、意識なら滅せられる。そうすればアオンゼウの器は無力化される」
「左様。それが現状の唯一の答えじゃ。して帰城影人よ、お主精神の具現化の術は使えるか?」
「どうだろうな。今までそういう技は使った事がなかったからな。ちょっと待ってくれ」
影人は内心でイヴに精神の具現化の技が使えるのかどうか聞いた。すると、イヴはこう答えた。
『別に出来ねえ事はねえが・・・・・・ちょいと厳しいな。精神の具現化っていうのは、超精密作業だ。出来る事は出来るだろうが、条件がキツい。少なくとも、俺はあいつの精神構造やら何やらの情報を知らなきゃ出来ないぜ』
「お前でもそう言うレベルか。って事はあのエルフっぽい人凄かったんだな・・・・・・悪い白麗さん。俺には使えそうにない」
イヴの答えを聞いた影人は白麗に対して首を横に振った。
「そうか。なら、レクナルを起こすか妾がやるしかないの。ただ、妾の術は時間がかかり過ぎる。出来ればレクナルの方が良いぞ」
「分かった。なら、レクナルさんの仮死を解除する」
影人が白麗によって後方に集められていた仮死状態の者たちに近づこうとする。だが、突然イズが短距離間の転移で影人の前に現れた。
「好きにはさせません」
「っ、どけよバグ野郎!」
切り上げるように振るわれた大鎌を避けた影人が、切り返すように拳を振るう。イズはその拳を額で受け止めた。イズは影人の攻撃を避ける必要はない。イズは手首を切り返し、影人に大鎌を振るわんとした。だが、その前にイズは白麗の尻尾に脇腹を叩かれた。
「帰城影人、少しの間妾が時間を稼いでやる。その間にレクナルや他の者どもを復活させよ」
「っ、悪い。頼んだ! 死ぬなよ白麗さん!」
「ふん、誰に言っておる」
白麗はニヤリと笑うとイズを吹き飛ばした。その間に影人は仮死している者たちの方へと向かう。
「という事で、お主の相手は妾じゃ。感涙を流すがよいぞ」
「『破絶の天狐』白麗・・・・・・あなたでは私を止められません」
「言いおるわ。なら、証明してみせよ」
白麗がフッと笑う。イズは両腕の砲身から光弾を放った。白麗はその光弾を華麗に避ける。
(製作者の傷は8割ほどは修復されている。そろそろ生命力を使ってもいい頃ですね)
イズは一瞬視線をフェルフィズの方へと向けた。今までイズが大鎌の真の力を使わなかったのは、フェルフィズが傷を癒していたからだ。傷を癒している最中に、無限とはいえ大量の生命力を喰らえば、治癒の速度が大幅に落ちてしまう。いくらフェルフィズが不死でも、傷を負ったままでは色々と不便な問題があるからだ。
「・・・・・・あなたはここで終わりです。死を知りなさい」
イズはフェルフィズと自身の見えない繋がりから大量の生命力を引き出すと、大鎌にそれを流し込んだ。大鎌の黒い刃が幾度目にもなる怪しい輝きを放った。




