第1734話 死と死(1)
イズの放った不可避の絶対死の一撃により、ゼノ、フェリート、シェルディア、シス、ハバラナス、レクナル、へシュナに斬撃が刻まれる。へシュナ以外の肉体を有している者はその身から血を噴き出す。そして、それらの者たちはドサリと地面に倒れた。まるで死んでいるかのように。
「一網打尽で私たちの勝利と言いたいところですが・・・・・・どうやらまだそうは言えないようですね。ええ、分かっていましたとも。最後に残る可能性があるのはあなただと。何せ、あなたには同じ力がある。私の最高傑作と同じ力が」
イズと共に地上に降りたフェルフィズがただ1人立ち上がっている者にその薄い灰色の目を向ける。そして、その者の名前を呼んだ。
「やはり、あなたが残りますか。ねえ、影人くん」
「はあ、はあ、はあ・・・・・・クソッタレが」
名前を呼ばれた影人はギロリとその金と黒の瞳でフェルフィズを睨みつけた。影人がただ1人無事だった理由、それは影人が咄嗟に『終焉』を解放したからだ。
「私の最高傑作の『全てを殺す力』とあなたの『全てを終わらせる力』は実質的に同義。絶対の死を与える力です。ゆえに、『終焉』ならば私の最高傑作の力を相殺できる」
「ごちゃごちゃとうるせえよ。分かりきってる事を一々得意げに話すな」
影人は変わらずにフェルフィズを睨み続ける。そして、影人はイズの持っている大鎌に視線を移した。
「『フェルフィズの大鎌』・・・・・・今の一撃、空間を無視してたな。シトュウさんが急にお前の居場所を識れなくなった事といい・・・・・・その大鎌には俺たちがまだ知らない力が隠されてるって事か」
「ご名答と言っておきましょう。まあ、それ以上の情報は与えませんがね。あ、ちなみに障壁が解除された時に驚いたのはわざとです。障壁はわざと解除させました。私はどのようにアオンゼウが倒されたのか知っていましたからね」
「ちっ、要は全部仕込み。罠かよ・・・・・・っ、何だ。その赤黒い宝石は? 前はそんなものなかったはずだ」
何度もフェルフィズの大鎌を見た事がある影人が、鎌に嵌め込まれた見慣れぬ宝石に気がつく。影人の呟きにフェルフィズは嬉しそうに笑った。
「ああ、気づいてくれますか。いや、嬉しいですね。この宝石は元々フェルフィズの大鎌の一部。つまり、この状態こそが正しき私の最高傑作の姿なのですよ」
「正しき姿・・・・・・? 意味が分からねえな。鎌がおしゃれしたからって何になるんだよ」
「なっていますよ。その結果、あなた達は彼女と戦っているでしょう」
「っ?」
フェルフィズはスッと手をイズに伸ばした。まるで紹介するように。勘の鋭い影人も、流石に訳がわからないといった顔を浮かべた。
「あの宝石はある意味、私の最高傑作の本体なのですよ。核といってもいい。そこにはあるモノが宿っている。いや、今は宿っていたという方がいいですね。イズ、構いません。あなたの正体を影人くんに教えてあげなさい」
「はい。初めましてスプリガン。初めましてとは言いましたが、私はあなたの事を知っています。あなたは私の本体と何度も戦っていますから。私はイズ。『フェルフィズの大鎌』の意思と呼べるモノです」
「なっ・・・・・・」
イズが影人に対して自身の正体を開示する。イズの正体を知った影人はその目を大きく見開いた。




