第1731話 異世界での決戦2(2)
『障壁に関して言えば不滅というわけではありません。過去に私たちがアオンゼウと戦った時は、障壁が展開される前にアオンゼウの懐に飛び込むといった対処法を取りました。つまり、障壁はアイデア次第で対処可能です。ですが・・・・・・アオンゼウの器は現在のところ不滅と言わざるを得ません。私たちはどのような方法でも、器を滅する事は出来なかった』
「ふん、前に説明した時に言っただろ。アオンゼウの体だけはどうしても消し去る事が出来なかったとな。奴の意識は概念無力化の力も再生の力もなかった。ゆえに、俺様は奴の意識だけには死を与える事が出来た。だが、器は別だ。奴の器には概念無力化の力と超再生の力が備わっている。その2つが組み合わさっている事によって、奴の器は不滅の存在になっている。死を与える事が出来ない。・・・・・・本当に忌々しい事よ」
へシュナに続きシスが不機嫌そうに顔を歪めそう言った。ちなみに、シェルディアたちが話をしている間、レクナルの指示の元にゼルザディルム、ロドルレイニ、ハバラナスの3竜がフェルフィズとイズに攻撃を仕掛けていた。
それはシェルディアがシスやへシュナからアオンゼウの情報を聞くための時間を作るためだった。同時に、レクナルはゼルザディルムとロドルレイニにアオンゼウの情報を話している。全体の状況を理解し、今必要であろう手を打つ。賢王の名は伊達ではなかった。
「? 色々と腑に落ちないのだけれど・・・・・・器の概念無力化の力に死の概念は弾かれなかったの? あなたが精神面だけに死を与える方法を会得しているのならば分かるけど、どうせ使ったのは真祖の禁呪でしょ。それに、さっきから引っ掛かっていたけれど、アオンゼウの攻撃が概念を無力化する力を有しているのなら、どうして私たちは『死なない』の? 不死も概念でしょう」
シェルディアが先ほどシスに聞こうとしていた疑問を交え、更なる疑問をぶつける。シスは少し長めの質問に面倒くさそうな顔を浮かべた。
「長い。へシュナに聞け。・・・・・・と言いたいところだが、いいだろう。寛大な俺様が答えをくれてやる。まず後者の答えだが、奴の概念無力化の力は『死』の概念だけは無力化出来ない。俺たちが死なないのはそれが理由だ」
「はあ? なら、どうしてアオンゼウの体を滅する事が出来なかったのよ」
遂にシェルディアが意味が分からないといった顔になる。シスは「それを今から説明してやろうと思ったのだ。急かすな愚図」と再び不機嫌そうな顔になった。
「言っただろう。奴の器には概念無力化の力と超再生が備わっている。この2つが組み合わさっている事が問題なのだ。そもそも、奴の体は生命の鼓動を持たぬ機械。それは死が存在しないという概念だ。死は生命ある者に訪れる道理。そのために、アオンゼウの体に対してだけは、『死』の概念が無力化される。それに加えて超再生だ。奴の体は、攻撃を受けたと同時に自動的に修復される。ゆえに、禁呪でもどのような攻撃でも奴の器の破壊は叶わない」
「・・・・・・何だか頭が痛くなるような話ね」
「ふん、そこだけは同意してやる。俺様も最初賢王から説明を聞いた時は煩わしく思ったからな。そして先ほどの前者の答えだが、当然奴の体に禁呪は弾かれた。だから、俺様たちは奴の意識だけを狙って死を与えたのだ。それが俺様たちがアオンゼウを倒した方法だ」
「意識だけを狙って・・・・・・? どういう事?」
「見ていれば分かる。どうせ、賢王が前と同じ仕込みをするはずだ。俺様たちが動くのはその時だ」
シスはジッとそのダークレッドの瞳でフェルフィズとイズを見つめた。その目は機を窺う目であった。




