第1729話 異世界での決戦1(4)
「星よ、私の敵に向かって無限に降り注ぎなさい」
シェルディアがそう宣言を下すと、夜空に輝く星が流れ星となってフェルフィズやイズ、大量の人形たちに向かって振り注いだ。
「障壁を展開」
イズはフェルフィズと自分を守るために障壁を展開した。障壁はどういう理屈かは分からないが、無限の隕石を受け止め続けた。
ただし、障壁外の剣や端末装置、人形は星によって壊滅した。
「・・・・・・絶対最強の真祖の力はやはり顕在か」
『私たちには当てずに敵だけに星を降らせる・・・・・・凄まじいですね』
その光景を見ていたレクナルとへシュナが緊張を滲ませた感想を漏らす。状況は一瞬にして変わった。
「まだまだ終わらないわよ。夜の主の名の下に命ずる。我のしもべとなり蘇れ、古の黒竜の王、古の白竜の王。其がモノたちの名は、ゼルザディルム、ロドルレイニ」
シェルディアが言葉を唱えると、地面から2つの墓石が出現した。そして、地面が隆起しそこから2体の黒と白の竜が現れた。
『おお、やっと出番が来たか。前回は夜の主が相手とはいえ、あまりにも早く情けない死に方をしたからな。不完全燃焼もいいところだったぞ』
『そうですね。そこだけは同意だ。さて、夜の主よ、私たちの敵はどこですか?』
蘇ったかつての竜王、ゼルザディルムとロドルレイニ。その姿を見たシスは「ほう」と懐かしげな顔を浮かべた。
「久しいな黒竜の王に白竜の王」
『ん? おお、真祖シスか。まさか貴様に会うとはな。この前は真祖シエラが相手だったが、今度は貴様が相手か?』
『色々と懐かしい顔も見えますね。賢王に聖霊王、そしてあれは・・・・・・気配からしてハバラナスですか。それにスプリガン。彼もいますか』
「っ、あれはまさか・・・・・・ゼルザディルム様、ロドルレイニ様・・・・・・なのか・・・・・・」
少し離れた所から2竜の姿を見たハバラナスは、信じられないといった顔で震えた声を漏らした。ハバラナスにとって、ゼルザディルムとロドルレイニは特別な竜だ。年の差は300年ほどしか離れていないが、ハバラナスはゼルザディルムとロドルレイニの強さと気高さを心の底から尊敬していた。ゆえに、ハバラナスの中に様々な感情が湧き上がってきた。
「はっ、こいつは心強いな」
かつて2竜と戦った事のある影人は小さく笑った。影人にとっても、ゼルザディルムとロドルレイニは特別な竜だ。2竜と共に戦える事に影人は少し嬉しさのようなものを感じていた。
「同窓会気分は分かるけどそれは後にして。今回の敵はあそこにいる男と少女の姿をしたモノよ。特に、少女の姿をしている方はかなり強いから気をつけてね。それ以外は一応全員味方よ」
『ほう! 賢王に聖霊王に真祖、それに同胞にスプリガンも味方か。相当にあれが強敵という事だな。血湧き肉躍る』
『ハバラナスが人竜形態になっている。ならば、私たちも形態を変化させた方が良さそうだな』
シェルディアの命令を受けたゼルザディルムとロドルレイニは、ハバラナス同様にその姿を人竜の形態に変えた。ゼルザディルムは黒色の短髪のナイスガイに。ロドルレイニは白銀の長髪の美女に。
「ふむ・・・・・・何だか、面倒そうな輩が増えましたね」
「私の本体を使用しますか? 使用すればこの空間は解除され、この空間の効果であるあの者たちも排除出来ると考えますが」
「いえ、今はまだやめておきましょう。この『世界』を解除するのは、一網打尽を狙える機会が来た時です。それまではあなたの本体は使用するべきではない」
「・・・・・・了解しました。製作者の意向に従います」
フェルフィズはイズの提案に首を横に振った。イズは小さく首肯した。
――異世界での決戦は、より一層その激しさを増そうとしていた。




