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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1726/2051

第1726話 異世界での決戦1(1)

「はっ・・・・・・今まで隠れて逃げ回ってた奴が、随分と格好つけた事を言うじゃねえか。おもちゃを手に入れてはしゃいで、何か勘違いでもしてるのか? 正直、痛いぜお前」

 フェルフィズの宣言に影人はバカにするように目を細めた。影人のその言葉は本心が8割、挑発の意味が2割といった感じだった。

「ははっ、ごもっともなお言葉です。確かに、私ははしゃいでいる。この子を手に入れて。ですが・・・勘違いをしているつもりはありませんよ」

 フェルフィズは今までとは違う少し冷たい笑みを浮かべると、イズの方に顔を向けた。

「イズ。あなたの力を存分に見せてあげなさい。君の初舞台です」

「了解しました、製作者」

 イズは頷くと一歩前に出た。そして、纏っていたマントを外した。

「兵装展開」

 イズが言葉を唱えると、イズの周囲に魔法陣のようなものが複数出現した。そして、その魔法陣の中から何かの機械、もしくは武器のようなものが出て来た。それらのものはイズの体に1人でに装着された。

「兵装展開、完了」

 イズがそう呟く。イズの両腕には砲身のようなものが、腰部には機械式のスカートのようなものが、背中にはブースター付きの機械式の翼のようなものが、その他に肩や胴体部に細かな機械も装着されていた。そして、イズの背後には6つほど小さな魔法陣が常時展開されていた。人間と機械が融合したようなその姿はまさに「魔機神」「機械仕掛けの神」に相応しいものだった。

「ちっ・・・・・・滅式兵装か」

「ええ、その通りです。流石はアオンゼウを封じた者の1人ですね」

 機械を纏ったイズを見たシスは忌々しげに舌打ちをした。シスの言葉を聞いたフェルフィズは首を縦に振った。

「イズ、これより敵勢力の殲滅を開始します」

 イズが正面の影人たちを見据え言葉を放った時だった。突然、どこからかフェルフィズとイズに向かって矢と雷と炎が迫ってきた。

「っ・・・・・・」

「攻撃を確認。障壁を展開します」

 フェルフィズが突然の攻撃に顔色を変える。イズは全くの無表情で、アオンゼウの器に内蔵されている障壁展開システムを作動させた。瞬間、フェルフィズとイズを守るように半透明のドーム状の障壁が展開された。矢と雷と炎はその障壁に阻まれた。

「・・・・・・やはり、奴の障壁には私の矢も効かないか」

『・・・・・・悪夢だな。アオンゼウが起動しているというのは』

『魔機神・・・・・・この世にあってはならない存在。自然と命の化身として、私は再度あなたを否定します』

 フェルフィズとイズに攻撃を仕掛けた者たち――レクナル、ハバラナス、へシュナがそれぞれの言葉を漏らした。ヘキゼメリを見張っているのは、吸血鬼たちだけではない。他の種族たちもだ。3者はそれぞれの見張りから報告を受けて、この場にやって来たのだった。

「おやおや・・・・・・どうやら、まだゲストがいたようですね。初めまして、古き者の皆さん。私はしがない物作りの神、フェルフィズと申します。以後、お見知り置きを」

 障壁が解除され、フェルフィズが3者に向かって挨拶をする。フェルフィズの挨拶を受けたレクナルはその顔を不快げに変えた。

「貴様のような者から挨拶をされる謂れはない。トュウリクスとサイザナスを惑わせたのは貴様だな?」

「惑わすなんてとんでもない。私はただ助言のような真似をしただけです。まあ、結果としては私が望むものになりましたがね」

『白々しい・・・・・・邪悪そのものだなお前は』

『付け込まれたのは確かにあの者たちの落ち度ですが・・・・・・不快な存在ですね』

 フェルフィズの返事を聞いたハバラナスとへシュナは、軽蔑と嫌悪の目をフェルフィズに向けた。

「遅いぞ貴様ら」

「うるさい。私はただ魔機神を再び封じに来ただけだ。本来ならば、またお前と共闘したくなどはないが・・・・・・今回だけは力を貸してやる」

『・・・・・・魔機神が相手ならば、再び我らが協力する他ない。いくらそれが気に食わない存在だとしてもな』

『ええ、そうですね』

 文句の言葉を放ったシスにレクナルはそう言葉を返した。レクナルのシスたちに一時的に協力するという姿勢は、ハバラナスとへシュナも同様だった。

「・・・・・・役者は揃った。行くぜ。今日こそお前に引導を渡してやるよ」

 影人が帽子の鍔を引き、その金の瞳でフェルフィズを睨みつける。

 そして、

「シッ・・・・・・!」 

 影人は地を蹴った。それが戦いの始まりを告げる合図となった。

 ――こうして、世界の存亡を懸けた戦いが始まった。

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