第1725話 世界の存亡を懸けて(4)
「影人さんの世界のお知り合いですか。影人さんのお知り合いはきっと素敵な方ばかりなんでしょうね。私もいつか会ってみたいです」
「はっ、キトナさんなら意気投合するような奴らも多いだろうな。ただ、俺からすれば騒がし過ぎるが・・・・・・」
影人が軽く頭を掻く。影人とキトナが会話を交わしながら散歩をしていると――
「――影人」
突然、正面にシェルディアが現れた。シェルディアはどこか真剣な顔を浮かべていた。
「嬢ちゃん・・・・・・? 何でここに・・・・・・っ、まさか・・・・・・」
「察しがいいわね。ええ、恐らくあなたが考えている通りよ。フェルフィズが動いたわ」
何かを察したような顔を浮かべる影人に、シェルディアが頷きそう言った。
「やっぱりか・・・・・・悪い、キトナさん。散歩はここまでだ。俺たちは行かなくちゃならない」
「っ・・・・・・はい。分かりました。では、私は皆さんを信じて待ちますから。だから、必ず皆さん無事に帰って来てくださいね」
影人が真剣な顔でキトナにそう告げる。キトナはスッとその目を見開くと、影人とシェルディアを真剣な顔で見つめた。
「ああ、任せろよ」
「ええ、約束するわキトナ」
その言葉に影人とシェルディアはそれぞれ力強く頷いた。
「ふむ・・・・・・そろそろ来ますかね」
「・・・・・・」
裏世界、最後の霊地ヘキゼメリ。変装も何もせずにそこにやって来たのはフェルフィズと、青色のマントに身を包んだイズだった。2人は周囲から自分たちを観察する視線を感じながらも、何もせずその場に留まり続けた。この周囲は見晴らしが良過ぎて隠れる所がない。この前とは状況が違い、どちらにせよ最終的には今から来るであろう者たちと戦う事になる。ゆえに、フェルフィズたちは堂々と姿を晒していた。
「・・・・・・空間の歪みを確認。来ます、製作者」
イズがそう呟いた直後だった。フェルフィズとイズのいる場所から少し離れた所に突然、何者たちかが現れた。
「フェルフィズ・・・・・・!」
「こんにちは影人さん。他の皆さんも。この間ぶりですね。ああ、あなたは初めましてですかね。真祖シス」
影人がフェルフィズを睨む。フェルフィズは影人とその他の者たち、シェルディア、ゼノ、フェリート、そしてシスにそう言った。
「勝手に俺様の名前を呼ぶな。しかし、お前がフェルフィズか。どうにも気に食わない奴だな」
「おや、嫌われてしまいましたね。第一印象は大事だというのに・・・・・・残念です」
「相変わらずふざけた様子ね。そして、あなたの横にいるのは先日あなたが奪ったアオンゼウの器ね。見たところ起動しているようだけど・・・・・・あなた、器の中に何を入れたの?」
シェルディアがイズを見つめ、フェルフィズに質問を飛ばす。シェルディアの質問はこの場にいる者たちのほとんどが抱いている気持ちの代弁だった。
「何だと思いますか? すぐに答えては些かつまらないですからね。まずは皆さんのご予想でもお聞きして、それから・・・・・・」
「ごちゃごちゃとうるせえよ。そいつの中に何が入ってるのかなんざどうでもいい。その器ごと、中身も全部俺が滅してやる」
「強気ですね影人くん。まあ、君にはそれだけの力がありますから、その言葉が虚勢でも何でもないという事は理解していますが。いいでしょう。では、試しましょうか。この子の力がどれだけ君に、いや君たちに通じるのかを」
フェルフィズが両手を広げる。そして、フェルフィズは狂気を宿した笑みを浮かべた。
「さあ、では始めましょうか。世界の存亡を懸けた戦いを。私の想いが上か、あなた達の想いが上か決めようじゃありませんか。世界をチップにしてねえ」




