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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1723/2051

第1723話 世界の存亡を懸けて(2)

「しかし・・・・・・ふふっ、こう言うのは失礼ですが影人様は不思議なお方ですね。私には丁寧なお言葉遣いなのに、シス様には普通に話されますし。シェルディア様はご友人という事なので分かりますが」

「ああ・・・・・・ハジェールさんの主人に対してこんな事を言うのは失礼ですけど、あいつはあんな奴ですからね。それに最初の印象も最悪だった。俺はそんな奴に礼儀を払う主義じゃないだけです」

 影人は正直にそう答えた。影人の言葉を聞いたハジェールはくすりと笑った。

「なるほど。確かに、礼節は本来相互間にあるべきものですからね。きっと、影人様のその正直なところがシス様やシェルディア様は気に入られたのでしょうね」

「どうですかね。俺にはその辺りはよく分かりませんよ。じゃあ、失礼します」

 影人は軽く頭を下げるとハジェールと別れた。それから影人がまた廊下を歩いていると、

「あ、影人さん。こんばんは」

「ん、キトナさんか。こんばんは」

 キトナと出会った。キトナは城で貸し出してもらっている黒いドレスに身を包み、影人に手を振ってきた。

 ちなみに、影人たちの挨拶は先ほどから夜の挨拶だが、別に今の時刻は夜というわけではない。時刻でいうならば、今は大体昼手前くらいの時刻だ。では、なぜ夜の挨拶なのかというと、それは血影の国の天候が関係している。

 血影の国の周囲は特殊な気候となっており、常に夜になっている。ゆえに、挨拶はいつも夜の挨拶なのだ。

「影人さんはどこかに行かれるんですか? この先は城の出入り口ですけど」

「まあ、ちょっと散歩にな。そういうキトナさんは?」

「私は書庫にお邪魔しようと思って。ここの書庫は凄いんですよ。皆さんずっと生き続けていらっしゃいますから、本の数が本当に膨大で。しかも、私が見た事のないような貴重なものばかりなんです。私の国の城の書庫もかなり本がありましたが、この城の書庫とは比べ物になりません」

「へえ、そんなに凄いのか。文字は分からないけど、機会があったら俺も行ってみるか」

「でしたら、影人さんもご一緒にいかがですか? 私も全て読めるわけではありませんが、分かる文字なら音読できますし」

 キトナは軽く手を合わせながらそんな事を言ってきた。影人は「ありがとう。気持ちは嬉しいよ」と小さく笑った。

「でも、今日はやっぱりやめとくよ。今はあんまり考え事したくない気分だし。じゃあな、キトナさん。また後で」

 影人は軽く手を振ると再び歩き始めようとした。

「そうですか。でしたら、私もご一緒に散歩してもよろしいですか?」

「? 別にいいけど・・・・・・キトナさんは書庫に行くんじゃなかったのか?」

 だが、キトナは影人にそう聞いて来た。キトナにそう聞かれた影人は、少し不思議そうな顔を浮かべた。

「影人さんと出会ったら影人さんとご一緒したい気分になったんです。書庫なら後でも行けますし」

「俺と一緒にいたいって・・・・・・キトナさん、変わってるな。見てくれの通り、俺全く面白くもない人間だぜ。でも、分かったよ。じゃあ、散歩に行くか」

「はい」

 影人はキトナを伴って城の出入り口を目指した。出入り口には吸血鬼の兵士が居り、影人とキトナが外に出たいと言うと扉を開けてくれた。

「・・・・・・今更だが、ずっと夜ってのも不思議っていうか変な感じだよな」

 外に出た影人が思わずそんな言葉を漏らす。常の夜空にはどういう原理かは知らないが、赤い月が常に輝いている。影人の言葉を聞いたキトナは、同意するように頷いた。

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