表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1718/2051

第1718話 災厄と最悪(1)

「っ、鎖が・・・・・・」

 フェルフィズがアオンゼウに向けて振るった自身と同じ名前の大鎌。その結果、アオンゼウの器を縛っていた魔法的・物質的な鎖は全て解除された。その光景を見た影人はまさかといった様子で、目を見開いた。アオンゼウの封印は霊地とリンクしている。封印が解けたという事はつまり、霊地が崩されたという事だ。

「あなた方にこう言うのは全く本意ではありませんが、ご安心を。確かに器の封印は解けましたが、霊地は崩れていませんよ。そして・・・・・・一旦さようならです」

 障壁が解除されるまで残り2秒。フェルフィズは影人たちに対してそう言うと、左手でアオンゼウの器に触れた。そして、見えざる腕を用いて腰部のポーチから金属片のようなものを取り出した。フェルフィズは見えざる腕に意思を伝え、金属片のようなものを床に向かって投げさせると、それを踏みつけた。金属片はそれ程硬い材質ではなかったらしく、パキンと音を立て割れた。その瞬間、障壁の持続時間は0秒となり、障壁は解除された。

「っ、逃すかよッ! お前はここで終わりだ!」

 障壁が解けた事によって、影人たちの攻撃がフェルフィズに届く。だがほんの刹那、ほんの刹那の差でフェルフィズとアオンゼウの器は淡い光に包まれ、その場から姿を消した。

「なっ・・・・・・」

「転移・・・・・・どうやら、逃げられたみたいね」

 フェルフィズがその場から消失したのを見た影人が思わずそんな声を漏らす。シェルディアは面白くなさそうな顔でそう呟いた。

「クソッ! 何で、何でだ・・・・・・!? 何で『世界』が解除された・・・・・・!? 『影闇の城』はどこにも行けない特性のはずなのに・・・・・・!」

 フェルフィズに逃げられたという事を理解した影人が拳を握る。今度こそ絶対に逃げられないように『世界』を使ったのに、その結果がこれだ。影人は不可解さと怒り、不甲斐なさなど様々な感情を抱いた。

「恐らくだけど、それはあの大鎌が関係しているわね。詳しくどうやったのかは分からないけど。それよりも、問題はフェルフィズが魔機神の器を持ってどこかに逃げたという事よ。この様子だと、どうやら霊地は崩れてはいないようだけど・・・・・・」

 シェルディアが少し難しげな顔でそう指摘した。シェルディアの指摘にゼノは首を傾げる。

「封印は霊地とリンクしてるんでしょ? 今までの霊地だってそうだったし。だけど、あのフェルフィズっていう奴が言うには、封印は解けたけど霊地は崩れてない。よく分からないな」

「・・・・・・どちらにせよ、私たちはチャンスを逃したという事です。霊地こそ崩されはしませんでしたが、その代わりにフェルフィズは魔機神の器という強力な兵器を手に入れた。彼がそれをどう使うつもりなのかは知りませんが、シェルディア様の言う通り、問題はそこでしょう」

 フェリートは厳しい表情でそう言った。それは影人たちが受け入れなければならない事実だった。

「取り敢えず、ここにいても仕方がないわ。1度地上に戻りましょう。フェルフィズがここを諦めたとは思えないけど、きっとすぐには戻って来ないでしょうし。地上も落ち着いて来ているでしょうし」

「・・・・・・ああ、そうだな」

 シェルディアの提案に影人は頷いた。いや、頷くしかなかった。今はアオンゼウの器が奪われた事をシスに報告する事くらいしか出来ないからだ。

(・・・・・・だが、まだだ。まだ終わりじゃない。確かに、状況は最悪だ。だけど、最悪中の最悪じゃない。まだ世界は崩壊してない。だったら、俺のやる事は変わらない)

 フェルフィズの世界を崩壊させるという目的を防ぎ、フェルフィズとの決着をつける。それが、今の影人が戦う理由だ。

「・・・・・・悪いが、俺は諦めが悪いんでな。今回も最後の最後まで足掻くぜ」

 影人はその目に真っ直ぐな、それでいて確かな意志を宿し、力強くそう言葉を放った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ