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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1717/2051

第1717話 追跡者と逃走者の終点(5)

「『見えざる腕』を装備しておいて正解でしたね。これがなければ危なかった」

 その答えはフェルフィズの腰部に装備された見えない腕の神器が関係していた。その腕は普段折り畳まれており鎖には接触していなかっため、命令を念で与えて動かす事が出来たのだ。そして、腰部のポーチから大鎌を取り出し、影闇の鎖を切り裂いたのだった。

『っ、拘束を解いてもお前が詰んでる事に変わりはない! 俺が『世界』を解除しない限り、お前はどこにも行けないんだからな!』

 影人がフェルフィズに向かって踏み込む。フェルフィズは影人の速さに反応する事が出来ない。影人は当然の如くそう考えていた。

 だがフェルフィズに近づくと、フェルフィズの影から大きな爪が出現した。そして、そこから闇色の獣が姿を現した。

『っ!?』

 影人は反射的に驚いたが、攻撃を避ける事はしなかった。今の影人は不死だからだ。獣の攻撃は影人の影闇の体をぼんやりと切り裂いただけだった。

「こちらの世界で見つけた影に住まう獣です。あなた達がこちらの世界に来ていると分かってから、色々と用意をしていましてね。ああ、まだまだありますよ」

 フェルフィズが左手で軽く指を鳴らすと、フェルフィズの影から更に3体の闇色の獣が現れた。それらはシェルディア、フェリート、ゼノへと襲い掛かった。更に更に、フェルフィズはポーチの中から小さなボール状に折り畳んだ複数体の人形を取り出し、それを投げた。投げられた人形たちは敵を襲うという意思の元、影人たちへと接近する。

「さて、後は・・・・・・」

 フェルフィズは見えざる腕から「フェルフィズの大鎌」を自身の両手で奪った。そして、フェルフィズは大鎌に自身の生命力を大量に注ぎ込んだ。フェルフィズの、神としての不老不死の無限の生命エネルギーを吸った大鎌はその真の力を発揮する。大鎌の刃が怪しく輝く。

(殺すものはこの空間そのもの。それを強く意識して・・・・・・っ、いや、これは・・・・・・)

 フェルフィズが力を振るう対象を意識したが、フェルフィズの脳内にある情報のようなものが入ってきた。それは影人の『世界』の特性。この空間は影人が解除しない限り、どのような空間も認めないというものだ。フェルフィズが今から行おうとする行為はそのルールに抵触する。

(なるほど。詰んでいると言っていたのはこの特性が理由ですか。厄介なルール、もとい特性だ。殺そうと思えば殺せるかもしれませんが、時間がかかりますね。なら・・・・・・)

 フェルフィズは違う対象を、影人が『世界』に供給しているエネルギーの流れのようなものを意識した。これを殺せば『世界』はルールに抵触せずに解除する事が出来る。フェルフィズはその流れを殺そうと鎌を虚空に振るおうとした。

『何かしようとしてるみたいだが、やらせねえよ!』

「2回も同じ獲物を逃すわけにはいかないわね」

「主人のためにその命をいただきます」

「悪いけど、壊すよ」

 だが、そう簡単にはいかなかった。闇色の獣や人形たちを一緒にして無力化した影人は、影闇の鎖と共にフェルフィズに肉薄し、シェルディアは造血武器をいくつか創造し、フェリートとゼノはフェルフィズに向かって拳を振るわんとした。

「まあですよね。ですが・・・・・・無駄ですよ」

 フェルフィズがニヤリと笑う。すると、フェルフィズのいる場所を中心として、ドーム状の障壁のようなものが展開された。影人たちの攻撃はその攻撃に阻まれた。

『っ!?』

「これは・・・・・・」

「なっ・・・・・・」

「壊れない・・・・・・?」

 影人、シェルディア、フェリート、ゼノの攻撃を受けても、その障壁はすぐには壊れなかった。4人が驚いた反応を示していると、フェルフィズはこう言った。

「いわゆる無敵バリアのようなものですよ。作るのには運が絡みまくりますし、持続時間は10秒しか持ちませんし、1回使えば壊れますが・・・・・・それでも道具とは使い用です。10秒間はこの障壁はいかなる攻撃にも耐える」

 フェルフィズはその神器を靴裏に仕込んでいた。ゆえに、容易に発動する事が出来たのだ。そして、10秒あれば十分。フェルフィズは鎌を虚空に振るい、『世界』の力の流れを切った。瞬間、『世界』を構成する力が途切れ、『世界』が崩壊した。場所が地下室に戻る。

「っ、俺の『世界』が・・・・・・」

 元のスプリガンの姿に戻った影人がどこか呆然とした顔になる。フェルフィズはそんな影人の顔に愉快さを覚えた。

「まだ終わりじゃありませんよ」

 フェルフィズがチラリと自分の背後、魔機神アオンゼウの器を見つめた。

(霊地を崩すナイフも障壁の外ですし、この状況で霊地を崩すのは無理ですね。ならせめて・・・・・・)

 障壁が解除されるまで、後6秒ほど。フェルフィズは再び大鎌に大量の生命力を流し込んだ。黒い刃がまた怪しく輝く。フェルフィズが意識したのは、器を縛る封印と霊地との繋がりだ。器は霊地の力とリンクして封印されている。ゆえに、封印も強力なのだ。

(いくら私の最高傑作が全てを殺す事が出来ると言っても、流石に世界の力の流れは殺す事が出来ない。それは世界を殺す事と同義ですからね。過去にも元の世界で試しましたがそれは出来なかった。だから、霊地とリンクしているこの封印は殺せない。ですが、先ほどと同じ。解釈を変えれば・・・・・・)

 残り5秒。フェルフィズがアオンゼウの器に向かい、大鎌を振るう。大鎌は器や鎖を傷つけず、封印と霊地とのリンクだけを切断した。

 その結果、霊地の力ありきの封印は解除され、


「・・・・・・」


 器は封印から解放された。

 ――障壁が解除されるまで残り4秒。

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