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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1715/2051

第1715話 追跡者と逃走者の終点(3)

「・・・・・・時間稼ぎのつもりか? だったら・・・・・・」

「違いますよ。それにメリットもない。どうせ、上のゴタゴタが片付けば吸血鬼や闇人たちもここに来るのでしょう? それに、ここは密室。逃げたくても逃げれませんよ。ここは力の流れが濃すぎるので、転移も難しいですからね」

「・・・・・・」

 フェルフィズがふるふるとかぶりを振る。影人は当然フェルフィズの言葉を完全には信用していない。だが、ここで『世界』を展開しても、シェルディアたちとは合流出来ない。『世界』は一種の異空間だからだ。ゆえに、影人は周囲から影闇の鎖を呼び出し、それでフェルフィズの体を縛った。

「おや、随分と乱暴ですね」

「その鎖は何者をも逃がさない鎖だ。少なくとも、お前の力じゃ絶対に壊せない。その状態だったら、お前のくだらない話に少し付き合ってやってもいいぜ」

 鎖によって拘束されたフェルフィズに影人はそう言葉を送った。これでフェルフィズは詰みだ。

「で、さっきの質問だが・・・・・・それが魔機神の器か」

「ええ。こうして見ると、アニメチックな格好の少女にしか見えませんが・・・・・・正真正銘の兵器ですよ。しかも、特上以上のね。正直、物作りを司る身としては非常に気になりますよ。彼女がいったいどこから来たのか。なぜ、災厄として現れたのかね」

 フェルフィズは顔を動かし、アオンゼウの器を好奇心の詰まった目で見つめた。そこに演技や嘘の色はない。フェルフィズは本心からそう思っているようだった。

「・・・・・・だが、こいつに既に意思はない。シトュウさんに・・・・・・『空』ならその答えも識れるだろうが、お前には永遠に無理だ」

「少し羨ましいとは思いますが、そうやって知った知識にあまり意味はないですよ。過程も含めて知るという事は大事なのです。最も価値ある知識は体験と結びついたもの。私はそう思いますね」

「はっ、狂神きょうじんがまともな事言ってるんじゃねえよ」

「酷いですねえ、差別ですよそれ」

 フェルフィズはやれやれといった顔でそう言葉を漏らした。

「いずれにせよ、この器は宝ですよ。私はこの器が欲しい。ええ、それはそれは心の底から。この作品と私の作品を掛け合わせば・・・・・・くくっ、自然と笑みが出てきますね」

「安心しろ。お前がこの器を手に入れる事はねえよ。それに、お前をあの世に送った後にこの器も俺がこの世から消してやるつもりだしな。『終焉』ならこいつも消せるだろ。危険な力なんてものは、封じるのがいい方法だが、最上はその存在を無くしちまう事だしな」

 影人がアオンゼウの器を見つめながらそう呟く。どんな世界にだって、悲しい事だが存在しない方がいいものはあるのだ。

「くくっ、果たしてそれはどうでしょうね。なまじ、機械仕掛けであるからこそ・・・・・・滅ぼし切る事が出来ないかもしれませんよ」

「っ? おい、どういう意味だそれは」

「さあ、どういう意味でしょうね」

 意味深な答えをしたフェルフィズに影人は思わずそう聞き返したが、フェルフィズははぐらかすように笑っただけだった。

「ちっ・・・・・・まあいい。無駄話もこれで終わりだ。もうそろそろ、嬢ちゃんたちもここに来る頃だ。地獄に行く覚悟は出来てるか?」

「いいですね、地獄にも1度行ってみたいと思っていたんですよ」

 フェルフィズが減らず口を叩いた時だった。地下室の扉が開かれシェルディア、ゼノ、フェリートが姿を現した。

「あら、どうやら既に決着はついているようね」

「あれが忌神フェルフィズですか・・・・・・」

「ふーん・・・・・・なんか案外普通って感じだね」

 鎖で縛られているフェルフィズを見たシェルディア、フェリート、ゼノがそれぞれの感想を述べる。特にフェリートとゼノはフェルフィズを初めて見たので、その目に様々な感情の色があった。

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