第1704話 闘争の声(6)
「やはり、貴様らも来たか」
「ふん、魔機神の器は誰にも渡さんぞ」
「黙れ愚か者ども。俺様は寛大だ。ゆえに、1度だけ忠告してやる。今すぐに退け。それと、貴様らもだ」
トュウリクスとサイザナスにそう言ったシスは、レクナルとハバラナス、へシュナにも厳しい目を向けた。
「無論、邪な思いを抱く者たちが去れば私も消えよう。私とて、この地に長く留まりたくはない。だが・・・・・・」
レクナルはシスに対しその翡翠の瞳を細めると、こう言った。
「その者が去らないというならば話は別だ。私は私に対する責任のために、武力を用いこの地の守護者となろう」
『俺は誰だろうと、残る者は噛み砕くだけだ』
『命と世界のために私も戦いましょう』
「・・・・・・本気か貴様ら?」
レクナルに続き、ハバラナスとへシュナの言葉を聞いたシスはその身から放つ重圧を高めた。シスの重圧を受け、他の者たちも重圧や闘気、果てには殺気をその身から放つ。場の空気は、確実に良くない方向へと向かっていた。
(っ、マズい。マズいぞこれは。この場の空気が闘争へと急激に傾むいている・・・・・・!)
影人は内心でそう呟いた。どういう手を使ったのか正確には分からないが、この状況を作ったのは確実にフェルフィズだ。恐らくだが、フェルフィズは闘争に乗じて結界を破り祠へと向かうつもりだ。当然、姿を変えて。
(それは阻止しなきゃならない。だが、この流れを止める事は恐らくもう・・・・・・)
「影人、あなたなら既に分かっていると思うけど、戦いはもう止められないわ。だから、私たちは注視しましょう。この機に乗じるつもりの暗躍者・・・・・・フェルフィズの動きを」
「だよな。やっぱりもうそれしかないか・・・・・・ったく、相変わらず最悪な野郎だ・・・・・・!」
どうやら影人と同じ事を考えていたらしいシェルディアがそう言葉を放つ。影人はシェルディアの言葉に同意しつつも、軽く悪態をついた。
「ふん、どいつもこいつも馬鹿のようだな。いいだろう、なら俺様が貴様らに分からせてやろう。己の愚昧さをな」
「ふっ、相変わらずの傲慢振りだな吸血鬼。その驕りを斬り捨ててくれる」
「全員燃やし尽くしてくれるわ」
「我が弓で全て射抜く」
『ふん、塵芥どもが』
『仕方がありません。ならば容赦はしません』
シスが手首を切り裂き血の槍を創造する。トュウリクスが腰から剣を抜く。サイザナスが右手に黒い炎を灯す。レクナルが弓を取り出す。ハバラナスがその身に赤い雷を纏わせる。へシュナの周囲に光の刃が形成される。闘争の空気はやがてヘキゼメリの空気を揺るがせる。
そして、
「これより、闘争を始める」
シスの闘争の声が響き、古き者たちの戦いが始まった。




