第1696話 魔機神アオンゼウ(2)
(私には使命がある。あの方から与えられた使命が。それを完遂するまで私は滅せられるわけにはいかない・・・・・・あの時はシイナの言うあの方っていうのが誰だか分からなかったが、恐らくそいつはアオンゼウの事なんだろうな)
4つの災厄には魂と意思があった。ゆえに、影人は災厄という概念すらも滅する事が出来た。だが、今話を聞いている限り、アオンゼウにはそれらがない。最悪、アオンゼウが蘇ったとして自分に殺す事が出来るか。影人がそんな事を考えている間にも、シスの話は続いた。
「・・・・・・4つの災厄は強力無比な存在だったが、最終的には各種族の勇者たちによって封印された。まあ、あの女狐だけは多少手助けをしていたがな。だが、アオンゼウだけは其奴らの手には余った。ゆえに、アオンゼウは『古き者』たちが対応せざるを得なかった。あの時だけだ。俺様たちが手を組んだのはな」
「っ、『古き者』?」
「太古より生き続ける力ある者たちの事よ。私やシスといった真祖、白麗なども古き者に分類されるわ」
疑問を以て呟いた影人の言葉に、シェルディアが反応する。その言葉の続きをシスが口にする。
「『真祖』たる俺様にシエラ、『破絶の天狐』白麗、『獄炎の魔王』サイザナス、『真弓の賢王』レクナル、『禍の冥王』トュウリクス、『赫雷の竜王』ハバラナス、『精霊王』へシュナ・・・・・・俺様たち全員でアオンゼウの討伐を行なった。その結果、俺様たちはアオンゼウの意識と呼べるものを破壊する事に成功した。だが、奴の器だけはどうしても消し去る事が出来なかった」
「懐かしい名前ね・・・・・・ならヘキゼメリに封印されているのは、そのアオンゼウの体だけという事?」
「ああ。ゆえに、災厄たちとは違い奴が復活し暴れるという事はない。だが、魔機神の器はそれだけで強力極まりない武器だ。悪用されれば、面倒な事にしかならん。ゆえに、俺様たちは『古き者』たちが多く住む裏世界、その唯一の霊地であるヘキゼメリにアオンゼウの体を封印した。以上が、お前たちが聞きたがっていた話の全てだ」
シスはそう話を締め括った。シスの話を聞いた影人たちは少しの間、話を理解しようと黙っていた。
「・・・・・・話は分かった。絶対にヘキゼメリを崩させはしねえが、封印されてるモノについては、取り敢えずは他の霊地よりはマシそうだな」
「そうだね。器も確かに危険だけど、暴れないだけマシだ」
影人が漏らした感想にゼノが同意した。
「封印されているモノが何なのかは分かったわ。ああ後、これはあまり関係がない疑問なのだけれど、そもそも、なぜ裏世界と呼ばれるこの異界に霊地があるの? 霊地は世界の流れの要所。私は裏世界の詳しい成り立ちは知らないけど・・・・・・途中から出来た異界に霊地は存在し得ないはず。なのに、なぜ・・・・・・」
「簡単な話よ。裏世界の大地は表世界の大陸の一部をそのまま持って来たものだからだ。ゆえに、途中から出来た異界にも霊地がある。まあ、あるというより移したという方が正しいな」
シェルディアの質問にシスはどうでもよさそうな顔で答えを述べた。その答えを聞いたキトナは驚きの表情を浮かべた。




