第1695話 魔機神アオンゼウ(1)
「それで、話とは何だ?」
シスに連れられてやって来たのは広い休憩室のような場所だった。シスはテーブルを挟んだ豪奢なソファに腰掛け、対面に座っている影人たちにそう聞いた。
「ヘキゼメリに封印されているモノの正体を教えてほしいのよ。白麗はあなたに聞けと言っていたから」
「あの女狐からだと? ちっ、あの女狐説明が面倒だから俺に押し付けたか。だが、どうしてヘキゼメリに封じられているモノを知りたがる? お前たちの事情が見えんな」
「そうね。少し長くなるけど・・・・・・」
シェルディアはシスに自分たちの事情を説明した。シェルディアがこの世界に戻って来た事、フェルフィズの事、そしてフェルフィズによって霊地が崩されている事を。
「・・・・・・なるほどな。事情は分かった。異世界の神がこの世界で暗躍か。気に入らんな」
話を聞いたシスはふんと鼻を鳴らした。そして、そのダークレッドの瞳を影人、ゼノ、フェリートに向けた。
「そして、お前たちはその神を追って来た異世界の者か。わざわざご苦労な事だな」
「皮肉をどうもありがとうだぜ真祖サマ。で、教えてくれよ真祖サマ。残る霊地はヘキゼメリだけ。事は一刻を争う。俺たちは何としてでも、ヘキゼメリで決着をつけなくちゃならないんだ」
「決着をつけるならば、封印されているモノが何なのか知らなくてもよいだろう。それとも、そいつを止められる自信がないのか?」
影人の言葉にシスがそう答える。すると、フェリートがこう言った。
「失礼ですが、事はもう自信云々の問題ではありません。私たちは必ずフェルフィズを止めなければならない。これは絶対です。・・・・・・ですが、物事とは常に最悪を想定し動かなければなりません。そのためにも、私たちは封印されているモノが何なのか知らなければならないのです」
「物は言いようだな・・・・・・まあいい。教えてやろう」
シスは軽く息を吐くと説明を始めた。
「ヘキゼメリに封印されているモノは、一言で言えば神だ。この世界の全ての命を絶滅させようとした愚かなる神よ」
「それは白麗も言っていたわ。邪なる神だって。後確か、機械仕掛けのと言っていたかしら」
「そうだ。奴は命を持つモノではない。見た目は俺様たちと変わらんが、鼓動も感情も有さぬ無機質な存在だ。機械仕掛け。その言葉の示すように、奴の体は機械で出来ている」
シェルディアの言葉にシスが頷く。シスの言葉を聞いた影人は思わずこんな言葉を漏らした。
「つまり・・・・・・そいつはロボットって事か?」
「ロボットなるモノが何なのか分からんが・・・・・・まあ、恐らくは間違ってはいまい。今から約1500年前、その神・・・・・・魔機神アオンゼウは突然現れた。4つの災厄を引き連れてな」
「っ、4つの災厄を・・・・ですか・・・・・・!?」
「ああ。火の災厄、『火天』のシイナ。水の災厄、『水天』のレナカ。風の災厄、『風天』のセユス。地の災厄、『地天』のエリレ。奴は其奴らの頭領であった。奴らが破壊の限りを尽くしたのは、頭領たるアオンゼウの命令だ」
驚くキトナにシスが首を縦に振る。4つの災厄の首領。魔機神アオンゼウ。その存在を聞いた影人は『火天』のシイナの言葉を思い出していた。




