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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1679/2051

第1679話 水天を飛ばせ(3)

「っ、破絶の天狐・・・・・・それに、真祖だと?」

「久しぶりじゃの『水天』のレナカ。大体1500年振りくらいかの」

「ふーん、私が何者なのか分かるのね」

 レナカにそう言われた白麗とシェルディアがそれぞれ反応を示す。そして、レナカはフェリートやゼノ、影人に目を移した。

「異世界の神の眷属・・・・・・っ? お前は何? 情報が全く見えない。それに・・・・・・斃したというの? 他の全ての災厄を・・・・・・」

「・・・・・・ああ。『地天』のエリレ、『火天』のシイナ、『風天』のセユス。そいつらは全員俺が滅した。後はお前だけだぜ、『水天』のレナカ」

 レナカは影人を見て他の災厄たちと同じような反応を示した。影人はどこか格好をつけたように、レナカにそう言葉を送った。

「帰城影人。さっさとあ奴を殺してくれ。妾といえども災厄を殺す事は出来ぬのでな」

「分かってるよ。一応、あいつを滅したら全部の災厄をコンプリートだ。そうなったら、俺は『四天を征した者』になる。はっ、中々いい称号だぜ」

「? 急にどうしたお主。どこかで頭でも打ったか?」

 影人はニヤリと強気な笑みを浮かべた。急に斜めというか直角90度レベルの頭パッパラパーな答えを返した影人に、白麗は不思議そうな顔になった。

「破絶の天狐に真祖、それに異世界の神の眷属に、謎の災厄殺し・・・・・・流石に分が悪いか」

 レナカは冷静に相手の戦力を分析すると、そう判断を下した。そして、この場から離脱する事を考えた。

「水よ、私が逃げる時間を稼ぎなさい」

 レナカが自分の下に広がるカレル湖を見つめそう唱える。すると、カレル湖の水がまるで意思を持っているかのように動き始めた。

「気をつけろ。奴は水の災厄。水を自由自在に操れる存在じゃ」

「へえ。なら、水がなければ何も出来ないのと同義よね」

 白麗の注意を聞いたシェルディアはフッと笑うと、再び『世界』を顕現させた。

「っ、これは一種の異空間・・・・・・『世界』顕現か」

「ええ、そうよ。ここなら水はないでしょ」

 レナカがその目で情報を確認する。シェルディアは超然たる笑みを浮かべた。

「おお、良いぞシェルディア。元の世界で戦っておったら妾の国に被害が出ておったかもしれんからの。うむ、褒めて遣わす」

「別にあなたの機嫌取りに使ったのではないのだけれどね。さて、それじゃあ災厄とやらを斃しましょうか」

 シェルディアはそう言うと、空に輝く星をレナカに向かって落とした。星は到底レナカが反応出来ない速度でレナカの水の体を貫いた。

「ふん、無駄よ。私の体は全てを受け流す」

「みたいね。精神ダメージの方もほとんど入っていないようだし。まあでも、例え私にあなたを斃す事が出来なかったとしても別にいいのよね。だって・・・・・・どうせ、あなた斃されるんだし。災厄だなんとかいってもね」

 シェルディアがバカにするような笑みを浮かべる。それは格下を嘲る笑みであった。

「っ・・・・・・たかが長く生きているだけの生命如きが」

 レナカがイラついたようにほんの少し顔を歪める。レナカは自身の水の両翼から高密度に圧縮した水の槍のようなものを影人たちに飛ばした。

「あら意外。挑発が効くのね」

「ほほっ、レナカを挑発とは。相変わらず面白いことをするのう」

「言ってる場合ですか・・・・・・! 執事の技能(スキルオブバトラー)、『障壁シールド』!」

「今回ばかりはお前に同意だぜ、フェリート・・・・・・!」

 攻撃されているというのに余裕たっぷりなシェルディアと白麗に、フェリートと影人は呆れたようにそう呟き、自分たちの正面に闇色の障壁を展開させた。レナカの放った水はその障壁に阻まれた。

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