第1674話 網を張れ(2)
「じゃが、まだそのフェルフィズを捕らえられる機会はあるぞ。奴は各霊地を不安定にして回っておるんじゃろ。だから、お主たちも妾の国に来た。この国も、いやこの島自体も霊地じゃからな」
「ああ。災厄が復活したのはあくまで副次的な効果に過ぎない。奴の本当の狙いは、この世界と俺たちの次元の境界を不安定に、もしくは完全に破壊して、最終的には俺たちの世界を壊す事だからな」
白麗の言葉を影人は肯定する。そして、影人はこう言葉を続けた。
「俺たちはあいつの目的を理解しこの世界の霊地を巡って奴を捕らえようとしてきた。俺たちにはその方法しかないからな。だが・・・・・・結果はこの通りだ。俺たちはいつも後手に回らざるを得ない。俺たちを見てきた白麗さんになら分かるだろ」
「ああ、分かっておるとも。姿を常に変え、それを見抜く手段もない状態では何をどうしても無理じゃろうて。だがの、言ったじゃろ。奴を捕らえられる機会はあると。喜ぶがよい、お主らは網を張る事が出来るぞ」
「っ、どういう意味だ・・・・・・?」
影人が顔を疑問の色に染める。シェルディアやフェリート、キトナやゼノも影人と似た表情になっていた。
「このテアメエルは少し特殊での。他の霊地は境界の脆い場所がけっこう点在しておるのじゃ。仮に、ウリタハナの町があったとしよう。ウリタハナは全体が霊地じゃ。だが、どこにでも境界を不安定にさせる力を使えばよいというものではない。境界を不安定にさせたければ、脆い場所に一点的に力を使わなければならない。お主らが今まで巡って来た霊地、メザミア、ウリタハナ、シザジベルにはそのような場所が大体10箇所はあった」
「・・・・・・テアメエルはそうじゃない、って事か?」
白麗の説明を聞いた影人が先読みするようにそう呟く。影人の呟きを聞いた白麗はその首を縦に振った。
「その通りじゃ。勘がいいの帰城影人。このテアメエルには妾がいる。破絶の天狐たる妾がな。妾がいる事によって、テアメエルは他の霊地よりも格段に安定しておる。そのため、テアメエルの境界の脆い場所は1つしかないのじゃ。その場所の名はシレナ火山。その麓にある湖、カレル湖じゃ。その辺りだけが唯一脆い」
「・・・・・・つまりは、そこで待ち伏せをすればいいって言いたいのね?」
「応よ」
今度はシェルディアが白麗の言わんとした事を察する。白麗は再び頷いた。
「一応、妾はお主たちがこの国に来てからカレル湖をずっと見ておる。あの辺りは神聖な場所ゆえ基本は誰も立ち入らん。ゆえに、誰かが来て何か怪しげな行為をすれば、それがお主たちの捜しているフェルフィズという者じゃ。無論、そのような者が現れればお主たちに教えてやろう」
「なるほど・・・・・・確かにそれならば、あのフェルフィズを捕らえられますね」
軽く顎に手を添えながらフェリートがそう呟く。それは明らかに自分たちにとっての光明だった。




