第1665話 魔なるモノを統べる者(2)
「久しぶりね白麗。本当に。あなたも不死者だから、見た目が変わらないのはある種当たり前なのだけど・・・・・・当時と変わらない姿で嬉しいわ」
「妾も昔と変わらぬお前に会えて嬉しく思うぞ。こちらの世界にお前が戻って来てから一応ずっと見てはいたが・・・・・・こうして互いに顔を合わせるのは本当に久しぶりじゃからな。ふふっ、色々と思い出すのう」
シェルディアと白麗は互いに笑みを浮かべた。2人に険悪な雰囲気はない。どうやら、シェルディアと白銀は仲が悪いというわけではなさそうだ。少しだけ緊張していた影人は、取り敢えず心の中で軽く息を吐いた。
「まずは近うよれ。お主たちとは色々と話したい」
白麗がパチンと指を鳴らすと、白麗の前に5つの座布団が出現した。どうやらあそこに座れという事らしい。影人たちは白麗の近くまで行くと、各々座布団に腰を下ろした。
「後は茶が必要じゃな。葉狐、茶を持って参れ。お前の入室を許可する」
「御意」
白麗がそう言うと襖の外から葉狐の声が聞こえた。そして数分後。葉狐はお盆に5つの茶を入れた湯呑みを持って部屋に入ってきた。そして、それを影人たちの前に置くと白麗に深く頭を下げ退室した。
「シェルディア以外の者たちは初めて会うゆえ、自己紹介をしようかの。妾は破絶の天狐、白麗。シェルディアとは古い知り合いじゃ」
白麗は肘掛けに預けていた体を正すと、右手のキセルのようなものを盆の上に置き影人たちにそう言ってきた。
「あ、ど、どうも。ええと俺は・・・・・・」
影人は白麗に軽く挨拶をすると、自身も一応自己紹介をしようとした。だが、影人が自己紹介をする前に白麗はこう言葉を挟んできた。
「よい。妾はお前たちの事を知っておる。お主は帰城影人じゃろ? お主の隣におるのは確かゼノ、次がフェリートじゃったか。そして、最後のお主はゼオリアルの第1王女キトナ・ヴェイザじゃな」
「っ・・・・・・!?」
白麗に自分たちの名前を言い当てられた影人がその顔を驚愕に染める。なぜ。どうして。シェルディアは別として、白麗が今日初めて会ったはずの影人たちの名前を知っているのか。影人の中はその疑問で溢れた。
「へえ・・・・・・どうやってかは知らないけど、本当に俺たちの事知ってるんだ」
「・・・・・・そのようですね」
「っ、私の正体を・・・・・・」
ゼノ、フェリート、キトナも影人と同じような反応を示す。ただ、ゼノとフェリートに関しては驚き半分、警戒半分といった感じの反応だった。
「そう、見ていたの・・・・・・気配や視線にはある程度敏感なのだけど、やはりあなたの目は感じ取れないわね」
「妾の目は特別じゃからな。妾に見られるというのは万物自然に見られるという事よ。気づかないのが当たり前じゃ。いくらお前であろうともな」
シェルディアは白麗を知っている事もあってか意味深に言葉を漏らす。白麗は人ならざるモノ特有の超然とした笑みを浮かべた。




