第1662話 テアメエル到着、妖狐の案内(3)
「その話は後でするわ。今は取り敢えず私に任せてちょうだい。葉狐、あなたの話は分かったわ。なら、私たちを案内してくれるかしら? どこに案内してくれるのかは知らないけど」
「かしこまりました」
シェルディアが葉狐の話を了承する。シェルディアの言葉を受けた葉狐は軽く頭を下げた。
「それではまず、テアメエルの中心都市ヒギツネに案内いたします。白麗様からまずは町を見せてやれと命じられていますので」
葉狐はそう言うと、軽く手を2回叩いた。すると、どこからか青い炎を纏った骸骨が現れた。骸骨は人が乗れるくらいの大きさの籠を引いていた。
「お呼びですか葉狐様」
「ええ骸炎。この方たちをヒギツネまでお連れしてください。くれぐれも丁重にね」
「了解っす」
骸炎と呼ばれた青い炎纏う骸骨はどのような仕組みか分からないが、声を発し頷いた。そして、引いていた籠を開く。
「どうぞお客様方。お乗りください。ヒギツネまですぐに且つ乗り心地よく運びますぜ」
「骸炎はテアメエル1番の運び屋です。皆様が不快感を抱く事なく運んでくれますよ」
骸炎の言葉を補足するように葉狐が骸炎の説明をする。いきなりヒギツネまで運ぶと言われた影人たちは軽く顔を見合わせる。
「大丈夫よ。白麗は騙し討ちのような真似はしないから。乗りましょう」
すると、シェルディアが率先して籠の中に入っていった。シェルディアがそう言うならと、影人たちも籠の中へと入る。籠の中は見た目からは想像もつかないほど広く、影人、シェルディア、ゼノ、フェリート、キトナの5人が入ってもそれほど狭さを感じなかった。
「あなたは乗らないの? 案内役なのでしょう」
「私はテアメエル限定にはなりますが瞬間移動の術が使えますので。先に向こうでお待ちしています。では」
シェルディアの言葉に葉狐はそう言葉を返すと、フッと消え去った。現れた時と同じように。どうやら、葉狐は瞬間移動でシェルディアたちの元にやってきたようだ。
「じゃあヒギツネに参りますぜ。瞬く間に着きますんで、短い間ですがごゆるりと」
骸炎はそう言って籠を閉じた。そして、影人たちは骸炎に運ばれヒギツネの町へと向かった。
「着きましたぜ。ヒギツネです」
影人たちが籠に入って3分ほどだろうか。運ばれているという感覚はまるでなかったが、骸炎は籠を開けるとそう言ってきた。
「あら、もう? 私たちが元いた場所からそんなに近かったの?」
「いや、あの裏浜からヒギツネまでは普通に距離がありますよ。歩きなら3〜4時間は掛かりますぜ。ですが、俺はこう見えて神速の脚を持ってましてね。だからこの短時間で到着したってわけです」
籠から出たシェルディアに骸炎は青い炎を揺らしながらそう説明した。
「なるほど。さすがテアメエル1番の運び屋といったところかしら」
「まあ、一応それが自慢ですからね。じゃあお客様。俺はこれで失礼します。ああ、駄賃は葉狐さんから既に頂いているんで結構です。テアメエル内で手を2回叩いてもらえれば俺はすぐに駆けつけるんで、利用したい時は呼んでください。それでは、またのご利用お待ちしてます」
骸炎はそう言い残すとフッと煙のように消え去った。シェルディアの目は骸炎が超速の速度で去って行ったのを確認した。なるほど。速度自慢なだけはある。シェルディアは内心でそう思った。
ちなみに、シェルディア以外の者たちは骸炎の速度を認識出来なかったので、骸骨が煙のように消えた事に多少驚いている様子だった。




