第1659話 紡いだ絆は嘘ではなくて(5)
「さて、次の目的地は確かテアメエルっていう場所だったな」
「ええ。ヘレナさんとハルさんによれば、魔妖国家の島の名前だったと記憶していますが・・・・・・」
シザジベルの町を出た影人とフェリートが次の目的地の情報を言葉に出す。影人とフェリートの会話を聞いていたキトナは軽く微笑みこう説明した。
「はい。フェリートさんが言ったようにテアメエルは東の海に浮かぶ魔妖国家の島の名前です。同時に、魔妖国家の名前でもあります。魔妖国家の領土はその島と周囲にある小さな島々だけなので」
「へえ、そうなのか・・・・・・なあ、キトナさん。ちょっと今更な質問かもなんだが、魔妖族っていうのはどんな種族なんだ?」
影人がキトナにそんな質問を投げかける。他の種族とは違い、魔妖族とは中々言葉からは想像がつきにくい種族名だ。だが、影人のその質問に答えたのはキトナではなくシェルディアだった。
「一言で言えば、幽霊や妖怪のような魔なるモノたちね。魔族や獣人族や翼人族のように基本的に同じ特徴を有している種族ではなく、魔妖族は特徴がバラバラなの。私も広い範囲で見れば魔妖族という事ができるわ」
「ええ、シェルディアさんの言う通りです。なので、魔妖族はこの世界で最も多様な種族と言われています」
シェルディアの説明にキトナがそう付け加える。その説明で影人は魔妖族がどんな種族が理解する事ができた。
「よし、なら行くとするか。魔妖国家の島、テアメエルに。フェリート、馬車頼むぜ。ウリタハナからシザジベルまでは俺が馬車創ったから今度はお前の番だ」
「言われなくても分かっていますよ」
フェリートはそう言うと、力を使い空飛ぶ馬車の創造を始めた。
(魔妖族の国家ね。そう言えば、彼女はまだ存在しているのかしら・・・・・・)
フェリートが馬車を創造している間、シェルディアはとある魔妖族の事を思い出していた。その魔妖族はシェルディアと同じく巨大な力を有していた存在で、またシェルディアと同じく死なずの存在だった。シェルディア、シエラ、そして3人目の真祖であるシスと互角に戦えたのは、その魔妖族くらいだった。
「? 嬢ちゃんもう行くぜ」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて。すぐに乗るわ」
既に馬車の中に入っていた影人がシェルディアに声を掛けてくる。シェルディアはそう言うと、馬車の中に乗り込んだ。
こうして、一行は第4の霊地テアメエルへと向かった。
「・・・・・・ふっ、遂に来るか妾の国に」
同時刻。周囲が薄闇に包まれた場所でポツリと女の声が響いた。女はスッと全てを見通す白銀の瞳を見開く。
「ああ、楽しみじゃ楽しみじゃ。せいぜい、丁重にもてなさねばな」
女は独り言を呟いた。そして、言葉通り楽しそうにその顔に笑顔を浮かべ、
「のう――シェルディア、そして帰城影人よ」
そう言った。




