第1643話 ソラとの日々(3)
「・・・・・・俺と遊びたいの?」
「はい。心から」
「ふ、ふーん・・・・・・そこまで言うんだったら、別に遊んであげてもいいよ」
「まあ、ありがとうございます」
ソラは嬉しさを隠しきれぬ様子でキトナにそう言った。キトナはソラに感謝の言葉を述べた。
「あら、面白そうね。だったら、私も一緒に遊ぼうかしら」
そのやり取りを見ていたシェルディアもそんな事を言い出す。まさかシェルディアまでそんな事を言うと思っていなかった影人は驚きを露わにした。
「え、じょ、嬢ちゃんも・・・・・・?」
「ええ。ダメかしら?」
「いや、ダメというか何というか・・・・・・」
影人が何とも言えない微妙な顔を浮かべていると、ソラがこう言った。
「仕方ないな! お前も遊んでもいいぞ!」
「ふふっ、ありがとう」
ドヤ顔で鼻息を吐くソラにシェルディアは嬉しそうに笑った。こうして、急遽キトナとシェルディアも遊びに加わった。
「さて、では何をして遊びましょうか? ソラさんがお決めになっていいですよ」
「えっとえっとね・・・・・・じゃあ、『カルタスの英雄ごっこ』! ずっとやりたかったんだ!」
「? ソラ、その『カルタスの英雄ごっこ』って何なんだ?」
キトナの言葉を受けたソラが顔を輝かせる。影人は当然の事ながらそのような遊びは知らなかったので、そう聞き返した。
「え、影人兄ちゃん翼人族なのにカルタスを知らないの?」
「あ、ああ。俺のいた所は辺境の地だったからな。そういう伝説系は伝わってないんだ」
影人は一瞬ドキリとした。どうやら、カルタスというのは翼人族なら誰でも知っている者らしい。影人は出来るだけ違和感のないように嘘をついた。
「そうなんだ。シェルディアとキトナ姉ちゃんも知らない?」
「そうね。私は知らないわ」
「私は一応存じています。カルタスというのは、数多の武勇の伝説を持つ翼人族の英雄の男性ですね。優しく強く誰からも好かれる方であったとか」
キトナが端的にカルタスなる人物の説明を行う。ソラはその説明に首を縦に振った。
「そう! そのカルタス! 俺がカルタスの役するから、影人兄ちゃんとキトナ姉ちゃんとシェルディアは悪者役ね! あ、影人兄ちゃんは1番最初にやられる雑魚役だから」
「何でだよ!?」
「だって1番弱そうな見た目してるし。何か雑魚にピッタリっていうか」
「お、お前なあ・・・・・・舐めるなよ? 俺はこれでもけっこう強いんだぞ」
「嘘だ〜」
「嘘じゃねえよ!」
子供相手に大人げなくそう吠える影人。ソラと影人のやり取りを見ていたシェルディアとキトナはクスリと笑っていた。
「よーしじゃあやるよ! ふはは、我が名はカルタス! 前髪の悪霊め、このカルタスが成敗してくれよう!」
「誰が前髪の悪霊だ!? ぐぅぅ・・・・・・あ、現れたなカルタス! そう、俺こそ前髪の悪霊だ! 今日こそお前の命を頂くぞ!」
思わずツッコミを入れたものの、前髪の悪霊という雑魚敵を影人は素直に演じた。厨二病なので、こういうものは何だかんだなりきる前髪であった。
「お前のような雑魚が私に勝てるか! 喰らえ前髪の悪霊め! 必殺、カルタス斬!」
「ぐはっ!? お、おのれ・・・・・・流石はカルタス。やはり俺では・・・・・・ガクッ」
ソラが両手で剣を振るうような仕草をし、影人は雑魚敵らしく地面に手をついた。
「ふふっ、じゃあ次は私ですね。がおー、荒ぶる魔獣だぞー。勇者カルタス食べてやるー」
「魔獣めこのカルタスが成敗してやるぞ! やあー!」
「や、やられたー」
キトナが両手を上げソラに襲いかかる仕草をする。ソラは剣を横に振るうような仕草で、魔獣役のキトナを倒した。




