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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1635/2051

第1635話 聖地 シザジベル(3)

「シェルディア、随分彼女の事気に入ってるね」

「ああ。だが気に入ってるっていうよりは、優しいって感じの方が強い気がするな。ずっと城から出れなかったキトナさんのことを気遣って、色々体験させてやりたいって感じだろ」

「あのシェルディア様にそんな繊細な優しさがありますかね? 単純に自分が知らない町をぶらつきたいというだけの可能性の方が高い気がしますが」

「流石にそれは・・・・・・いや、確かにあり得るな」

 フェリートの指摘に思わず影人は軽く唸った。

 それから1時間ほど。影人たち男性組は適当に宿で寛いでいた。

「ちょっと散歩に行ってくる。そんな長い時間出るつもりはねえから、少ししたら戻って来る」

「ん」

「気楽ですね。そんな暇があるなら、フェルフィズに一矢報いる方法でも考えたらどうですか?」

「今日は一段と嫌味が多いな片眼鏡さん。正直、その方法は軽く何百回も考えたが全部詰んでる。これで満足かよ。じゃあな」

 影人は軽く手を振り部屋を出て階段を下りた。影人たちの部屋は3階で出入り口は当然の事ながら1階だ。影人は宿を出ると、気分の赴くまま適当に歩き始めた。

(・・・・・・いい天気に綺麗な町。散歩としちゃ最高だな。まあ、この視線がなければもっと最高なんだが・・・・・・)

 影人は前髪の下の目を左右に向けた。街行く人々は影人に相変わらず怯えたような視線を向けて来る。迫害こそされないが気分はよくはない。影人は少しの居心地の悪さを覚えながらも、街を歩き続けた。

「待てこのクソガキ! よくも泥団子なんか投げやがったな!? 『羽無し』だからって容赦しねえぞ!」

「うるせえ! 後『羽無し』って呼ぶな! もう1回泥団子ぶつけるぞ!」

「ん・・・・・・?」

 影人が町の西側を歩いている時だった。突然、そんな怒号が聞こえてきた。声は正面から聞こえてきた。影人は怒号の主を目で探した。

 その声の主はすぐに見つかった。影人のいる方に向かって1人の少年と翼人族の若者が走って来る。前者の少年は光沢感のあるスカイブルーの髪で、歳の頃は10歳かそこらだろう。少年は翼人族でないのかその背に羽はなかった。後者の若者は大体20代くらいでその背には立派な羽があった。ただ、その白い羽は一部分が泥で汚れていた。

「気のせいか・・・・・・? 『羽無し』っていう単語が聞こえた気がしたが・・・・・・」

 影人が首を傾げている間にも、追いかけっこを繰り広げている少年と若者は影人の方に近づいて来る。往来の人々は2人を避けている。影人も人々に倣って体を横に動かそうとした。

「っ!? お、お前・・・・・・」

「?」

 少年は影人の姿を見るとハッとした顔を浮かべ立ち止まった。影人は頭に疑問のマークを浮かべる。当然ながら少年とは初対面だ。

「追いついたぞ! 俺の羽を汚した代償は支払ってもらうぜ!」

 少年が影人を見て立ち止まっている間に、若者が少年に追いつく。若者はその赤髪を逆立たせるような勢いの怒りを露わにし少年にぶつけた。

「っ・・・・・・」

 若者に追いつかれた少年は焦ったような顔を浮かべた。そして、どういうわけか影人の背後へとその身を隠した。

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