第1634話 聖地 シザジベル(2)
「何とか宿は取れたが・・・・・・ここの主人もさっきの翼人族の人と同じ感じだったな」
宿屋の一室内。2つある内のベッドの1つに腰掛けた影人は軽く息を吐きそう言った。
「ですね。ここの主人は『羽無し』という言葉こそ用いませんでしたが、他の方たちと同じく怯えた様子でした。私たちが吸血鬼と言った後は、あなたが言ったように先ほどの男性と同じ。態度が急に変わりました。不思議ですね」
「やっぱり、『羽無し』っていうのと何か関係あるよね。これ」
フェリートは立ちながら、ゼノは影人の対面にあるベッドに腰掛けながら言葉を交わす。ちなみ、宿は部屋は2つ取っており、男と女で分かれた。キトナとシェルディアは影人たちの隣の部屋だ。
「十中八九な。でもまあ、吸血鬼っていえば態度は普通になるし明確な害もない。だから、気にし過ぎる必要はないっちゃない。俺たちがここに来た目的はフェルフィズだからな」
「それは分かっていますが・・・・・・フェルフィズは本当に次にここにやって来るのでしょうかね。残る霊地はここを含め後3つ。焦っても意味はないと理解していますが、そろそろ勝負を掛けなければいけない時期です。霊地を3つ崩されたとなると、いよいよ本格的にマズくなりますよ」
「回りくどい言い方するなよ。要は本当に俺の勘が当たってるのかって事だろ。確証や物証はないが、多分次はここで間違いねえよ。あいつの性格的にな」
フェリートにそう言われた影人は端的にそう答える。ウリタハナから場所が未だに分からないヘキゼメリを除き、1番近かった霊地はこのシザジベルだ。つまりは1番近くて安易に予想しやすいルート。そこに愉快犯的なフェルフィズの性格を考慮すると、フェルフィズは次にここに来る。主に影人のそのような意見で、一行はこのシザジベルにやって来たのだった。
「まあ、どっちにしろ手掛かりはないようなものだし、予想つけられるだけマシって感じだよね。フェリートもその辺りの事は本当は分かってるでしょ」
「・・・・・・ええ。分かっていますよゼノ。私たちはどちらにしよ後手にしか回れない。本当に歯痒い状況ですよ」
「まあ、町の中で罠も碌にしかけられねえしな。本当、クソゲーやらされてる気分だぜ」
ため息を吐くフェリートに同意するように影人も頷く。すると、部屋のドアが開きシェルディアとキトナが入ってきた。
「失礼するわ。さて、フェルフィズが何かアクションを起こすまでは正直暇だから、私とキトナはこの町を巡るつもりだけど・・・・・・あなた達はどうするつもり?」
「俺は別にって感じだな・・・・・・まあ、気が向いたら後で散歩でもするかな」
「俺も似たような感じ」
「私もですかね」
シェルディアの問いかけに影人、ゼノ、フェリートはそう答えを返した。3人の答えを聞いたシェルディアは「そう。分かったわ」と頷いた。
「じゃあ行きましょうかキトナ。女2人で色々と楽しみましょう」
「はい、シェルディアさん」
キトナが嬉しそうに頷く。そして、シェルディアとキトナは一行の財布係であるフェリートから金貨を1枚渡され、宿を出て行った。




